バイデン政権のもとで息を吹き返すアメリカの「労働運動」...国民の67%が「組合を支持」する理由とは?
THE UNION FIGHT
一連の労働法改革の取り組みに対し、共和党や米国商工会議所など影響力のある企業団体は猛然と反対している。彼らに言わせれば、組合が事業のコストを押し上げ、雇用の国外流出を促している。商工会議所のある役職者は書簡で、法案は雇用主を苦しめて「経済のあらゆる部門を混乱させる」と警告した。
バイデン政権はNLRBの権限を強化するための措置を講じているが、各地で州議会共和党が「労働権法」を制定する動きに十分に対抗できていないと批判されている。既に南部を中心に28州で導入されている労働権法は、労働者に組合加入を強制せず、選択の自由を守ると賛成派は主張する。
一方で、連邦最高裁判所は近年、労働者に繰り返し打撃を与えている。18年には、公共部門の非組合員に団体交渉のコストを負担させる州法を違憲とした。昨年6月の判決でも、ストを行った労働者に対して雇用主は損害賠償の訴訟を起こすことができるという意見を付けた。
組合をめぐる争いは、反組合色が濃い南部で投資している産業では特に熾烈だ。労働運動の指導者の間では、熱心な若手組織員が、伝統的に労働者に好意的ではない産業や地域で壁にぶつかり、最近の運動の勢いがそがれるのではないかという懸念が広がっている。これについてミルクマンは次のように語る。
「あなたがミレニアル世代のスターバックスのバリスタだとしよう。所属する店舗は投票で組合結成が決まった。でも、あれだけ頑張ったのに、職場では何も変わらない」
「労働史を振り返れば、物事が大きく変化するときは、一つの職場や、スターバックスやアップルストアの一店舗だけのことではない。大きな波が押し寄せるものだ。もしかすると波は起きつつあるのかもしれないが、その確証はない」
労働運動がその勢いを維持するためには、バイデンが再選されて組合に優しい政策が続く必要がある。共和党候補はドナルド・トランプ前大統領を先頭に、IRAをはじめバイデン政権の国内政策に対して攻撃を強めている。
フロリダ州知事のロン・デサンティスやニッキー・ヘイリー前国連大使らも、自分が大統領になったらIRAを廃止すると約束している。ヘイリーは同法の制定1周年に、「中国を利する増税とグリーン補助金で埋め尽くされた共産主義者のマニフェストだ」とX(旧ツイッター)に投稿した。
昨年10月に就任したマイク・ジョンソン下院議長の下で共和党が最初に承認した主な法案は、1年前にバイデン政権が成立させた気候変動対策の予算を数十億ドル削減するというものだった。ジョンソンは22年にIRAが成立した後に、その気候・エネルギー対策を「グリーンエネルギーの裏金」と呼んだ。