最新記事
労働組合

バイデン政権のもとで息を吹き返すアメリカの「労働運動」...国民の67%が「組合を支持」する理由とは?

THE UNION FIGHT

2024年3月23日(土)13時40分
ダニエル・ブッシュ(ホワイトハウス担当)
プラカードを掲げるスト中の全米脚本家組合のメンバー(ニューヨーク、昨年5月10日) SPENCER PLATT/GETTY IMAGES

プラカードを掲げるスト中の全米脚本家組合のメンバー(ニューヨーク、昨年5月10日) SPENCER PLATT/GETTY IMAGES

<「死に体」だった労働運動がバイデノミクスで復活。AIや量子コンピューターの時代に労働者の新たな未来を示せるか>

アメリカで労働運動が勢いづいている。宅配ドライバー、医療従事者、ハリウッドの脚本家、自動車工場労働者。昨年は全米でさまざまな労働者が組合を結成し、ストを行った。ジョー・バイデン大統領は9月、現職大統領では初めてスト中の労働者のピケに加わっている。

自動車大手3社に対してストを行った全米自動車労組(UAW)のショーン・フェイン委員長は昨年11月、クライスラーの親会社ステランティスとの労使交渉での勝利を宣言し、こう述べた。「私たちは会社側に泣き付いたり、ひどい労働時間を受け入れることで、この結果を手にしたのではない。反撃して勝ったのだ」

バイデンは組織労働者に多くの闘いの場をもたらしている。マッキンゼーのリポートによると、「バイデノミクス」を構成する3つの主要な国内法(インフラ投資・雇用法、インフレ抑制法、半導体産業の振興を目的とするCHIPS法)は今後10年間で、インフラやクリーンエネルギー、製造業に2兆ドル超の連邦政府支出を新たに投入する。これら資金の大部分は、拠出される企業に労働組合との協働を義務付ける。組合にとっては近年まれに見る救いの手であり、急速に進化する21世紀経済の中で労働条件の改善を進める場が与えられることになる。

「経済が大転換期を迎え、私たちは岐路に立っている」と、ジョージタウン大学のジョセフ・マッカーティン教授(労働史)は本誌に語った。「現在の労働運動の復活は、将来の仕事の在り方に発言権を持ちたいという労働者の望みによるものだ」

組合側には前向きになれる理由がある。民主党は過去10年間に、これまで以上に進歩的で組合に優しい経済政策を取り、今や労働運動は大統領という強い味方を得た。

「バイデン以前の民主党は労働運動を、管理・育成し、取引関係を持つべき有権者グループと見なしていた。盟友だが、ファミリーではなかった」と、2022年までバイデンの労働問題顧問を務めたセス・ハリスは本誌に語った。「バイデンは違う。組織労働者を経済的・社会的アジェンダ全体の中心と考えている」

コロナ禍も労働に対する市民の姿勢を変えた。パンデミックが終わると、特に若い世代は労働条件の改善を期待し、組織労働者を支持する人が増えた。ギャラップ社の昨年の世論調査によると、アメリカ人の67%が労働組合を支持しており、1965年以来の高水準となっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中