最新記事
労働組合

バイデン政権のもとで息を吹き返すアメリカの「労働運動」...国民の67%が「組合を支持」する理由とは?

THE UNION FIGHT

2024年3月23日(土)13時40分
ダニエル・ブッシュ(ホワイトハウス担当)

newsweekjp_20240322024541.jpg

食料品小売り大手の組合支持派。組合の動きは小売部門にも拡大 SPENCER PLATT/GETTY IMAGES

バイデノミクスを追い風に

労働争議も増加傾向にある。コーネル大学の研究者らの調査によれば、22年には全米でストとロックアウトが計424件あり、前年から52%増えた。昨年は12月半ばまでに405件の労働争議が行われ、注目を集めたUAWのストもその1つだ。

だが自動車産業の対立は、労働組合が依然として企業や、最高裁をはじめとする保守派の法廷からの根強い反対に直面していることを思い出させた。連邦議会と州議会の共和党も、労働組織を弱体化させるために積極的な活動を展開している。現在の組合加入者は10%にすぎず、第2次大戦直後の全盛期とは大きな開きがある。

「産業・労働政策を政府が管理するのは正しいアプローチではない」と、保守派ロビー団体である全米労働権委員会のマーク・ミックス会長は言う。バイデン政権が労働組合を後押ししようとしても、その目的はかなわない可能性があると彼は付け加えた。「労働組合は勢力拡大のために政府を頼ってきたが、50年代以降、実際に拡大していない」

組合側には、バイデンの政策が長期にわたる衰退を逆転させる大きなチャンスだとの見方が強い。そのためアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)のリズ・シューラー会長(全米最大の労働団体を女性で初めて率いる)や他の労働運動指導者は、将来に向けて労働組合をよりよい位置に付けようと改革を進めている。その重点は経済の成長部門に軸足を移し、若くて多様な新世代の労働者を引き入れることだ。

「組合が建設業など『ハード』な労働者を代表するステレオタイプはもう古い」と、シューラーは語った。彼女はAFL-CIOが南部に進出し、クリーンエネルギーなど新興市場の労働者をターゲットにする計画の詳細を本誌に明らかにした。「私たちは時代に合った存在となり、将来の労働力のニーズに応えたい」

バイデン政権が推進する経済の近代化は、大規模な試みだ。GDPに占める割合で見ると、彼の計画はニューディール政策以来最大の国内支出プログラムともいわれる。

インフラ投資・雇用法は、高速道路や橋などの建設事業への連邦政府の資金援助が、可能な限り多くの組合員の雇用を生むよう設計された。

インフレ抑制法(IRA)でも労働組合が優先され、数十億ドル規模の新しいクリーンエネルギー税制優遇措置を利用するため、企業に実勢賃金基準など労働者に優しい慣行を採用するよう求めている。ホワイトハウスによると、この法律は初年度だけで17万人のクリーンエネルギー関連の新規雇用を創出し、民間部門で1100億ドル相当のクリーンエネルギー事業につながった。ホワイトハウスではIRAが向こう10年間に、再生可能エネルギー分野で計150万人の雇用を創出すると予測する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中