最新記事
一夫多妻制

インドで一夫多妻制が違法に、ムスリム女性内でも賛否

2024年2月19日(月)11時30分
ロイター

新しい民法は1950年に施行されたインド憲法を基礎としている。同国におけるイスラム教徒の個人法を近代化し、完全な男女平等の保障を目指す大改革だとBJP幹部らは言う。

2013年の調査によれば、インド国内のムスリム女性のうち91.7%が、ムスリム男性は先に結婚した女性との婚姻関係が続いているうちは他の女性との結婚を許されるべきではないと回答した。

 

ただムスリムの多くは、与党BJPがヒンズー教の教義を追求してムスリムを差別し、イスラム教に干渉する法律を押し付けていると非難する。イスラム法ではムスリム男性が4人まで配偶者を持つことを認めているほか、未成年の結婚を禁止する厳格な規定はない。

野党第一党の議員に立候補したジャファーさんは新法の一部について、イスラム教の悪い面を強調し、ムスリムの暮らしの改善といった問題から関心をそらすためのモディ政権の戦略だとの見方を示した。

インド最高裁は2017年、イスラム教における即時離婚について違憲であると判断した。ただ一夫多妻制など、女性の権利平等を脅かしているとの批判もある他の慣習については禁止しなかった。

一夫多妻制の禁止に加え、新法は男女の婚姻開始年齢を設定したほか、養子や婚外子、代理出産で生まれた子どもに対しても先祖代々の財産を平等に分配することを明確に保証している。

BJP幹部や女性の権利を訴える活動家らは同法が、時代と逆行する慣習の廃止を目指すものだとする一方、ムスリムの政治家らは信教の自由を侵害していると主張する。

全インドイスラム教徒個人法委員会(AIMPLB)は新法について、実現不可能で、多宗教のインド社会における直接的な脅威だと述べた。

「重婚の禁止はほとんど意味がない。データによれば、インド国内で2人以上の配偶者を持つ男性は非常に少ない」とインド福祉党(WPI)のSQRイリヤス党首は指摘する。同氏は、政府にイスラム法への疑問を呈する権利はないとも付け加えた。

北部ウッタルプラデシュ州で二人の子どもと暮らすジャファーさんはこう話す。

「イスラム教には、尊厳のある生活を提供する規定が十分にある。必要なのは、新たな民法ではない。尊厳のために闘う女性に、迅速な正義をもたらすことだ」




[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 独占取材カンボジア国際詐欺
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

富士通、今期営業益35%増見込み 売上は2%減少へ

ビジネス

富士通、発行済株式の6.75%・1700億円上限に

ビジネス

キヤノン、通期業績を下方修正 為替と米関税政策の影

ビジネス

ニデック、26年3月期は8.2%の営業増益見込む 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中