インドで一夫多妻制が違法に、ムスリム女性内でも賛否
シャヤラ・バノさん(49)は2月7日、安堵(あんど)のため息をついた。バノさんの住むインドの小さな州で一夫多妻制を禁止する法律が制定され、自身が最高裁判所で起こした訴訟を含め、何年間にもわたる努力が報われたためだ。写真は集団結婚式に臨むムスリム女性。1月、ムンバイで撮影(2024年 ロイター/Francis Mascarenhas)
シャヤラ・バノさん(49)は2月7日、安堵(あんど)のため息をついた。バノさんの住むインドの小さな州で一夫多妻制を禁止する法律が制定され、自身が最高裁判所で起こした訴訟を含め、何年間にもわたる努力が報われたためだ。
「これで、結婚や離婚に関する古くからのイスラム法(シャリア)を巡る闘いに勝ったと言うことができる」
2人の女性との結婚を選んだ夫はイスラム法に則り、アラビア語で離婚を意味する「タラーク」(talaq)と3回唱えただけで、バノさんとの「即時離婚」を成立させたという。
「男性が同時に2人以上と結婚することを認めるイスラム教の婚姻制度は、終わらせなければならなかった」。バノさんはそうロイターに語った。
他方、一夫多妻制や即時離婚などの慣習を廃止する新たな法律を喜ばしく思わない人もいる。その1人であるサダフ・ジャファーさんは、自分の同意を得ずに夫がほかの女性と結婚することを巡って法廷で争ってはいるものの、新法には懸念を示す。
子ども2人の養育費扶助を求めるジャファーさんは「イスラム教の一夫多妻制は厳格な規則や制約のもとで認められてはいるが、悪用されている」と言う。インドの司法による正当な裁きを願い、イスラム教の学者には相談しなかったと明かした。
同国北部ウッタラカンド州における「統一民法」の導入は、同国の宗教的少数者としては最も大きなグループであるイスラム教徒(ムスリム)の女性の間に亀裂をもたらしている。夫が複数の女性と結婚したことで人生が一変した女性らの間でさえも、そうした溝が生じているという。
新たな規定では、結婚や離婚、相続、養子縁組に関するイスラム法の決まりよりも、非宗教的な法律を重視すると定めており、活動家のバノさんらは称賛している。だがジャファーさんやムスリム政治家、イスラム教学者らにとっては、ヒンズー教至上主義を掲げる与党インド人民党(BJP)を率いるモディ首相の施策は歓迎できないものだという。
ウッタラカンド州でこの民法が採択されたことは、他州でも国内のイスラム教徒からの怒りや反対の声を押し切って同法の導入を進めていく上での布石になると見込まれている。インドには約2億人のイスラム教徒が暮らしており、これは世界で3番目に多い数だ。