交渉による「平和」か、さらなる「地獄」か?米軍の「イラン系組織空爆」の危険な駆け引き
The Strategy of U.S. Drone Strikes
さて、この先はどうなるか?
イランは自制を続けるか、それとも敵の脅しに屈しないことを示すために米軍施設への強力な反撃を仕掛けるか?
そもそも自国の傘下にある武装勢力の動きをどこまでコントロールできるのか?
各地の武装勢力は今後も無謀な攻撃を続けるかもしれない。意図的ではないとしても、結果としてさらなる米兵の犠牲が出るかもしれない。
そうなればアメリカは、一段と強力な反撃に出ざるを得ない。その場合、それでもイランは自国の軍隊を動かさずにいられるだろうか?
米政府高官によれば、2日の攻撃は米兵殺害に対する最初の反撃であり、これで終わりではないという。
明言はされていないが、その後の攻撃の規模や範囲、標的は、イランとその代理勢力の今後の動きによって決まるのだろう。
バイデンには、2日の攻撃でイランとの緊張を増大させる意図はなかった。
アメリカのメッセージをイランが正しく受け取り、適切に対応すれば、レバノン南部からのイスラム組織ヒズボラの脅威や紅海でのイスラム教シーア派組織フーシ派による船舶攻撃、イラクやシリアにいる代理勢力からの攻撃などは、ある程度まで落ち着くだろう。
しかし、ちょっとしたことで抗争はエスカレートする。
偶発的な事態や誤算・誤認が重なれば、いつ戦火が拡大してもおかしくない。
一方でアントニー・ブリンケン米国務長官は昨年10月7日以来、5回も中東へ飛んでシャトル外交を展開している。
主な目的は2つある。
まずはイスラエルとハマスの停戦。これには人質と捕虜の交換も含まれる。
そして2つ目は、中東地域の力関係を根本から変えるような合意の形成。
具体的にはサウジアラビアとイスラエルの関係正常化であり、これにはサウジアラビアに安全の保障や(平和利用に限定した)核技術を与えることも含まれる。
バイデンはもっとやれる
しかし、こうした外交努力には1つだけ難点がある。
当事者であるイスラエルとハマスが参加していないことだ。
ハマス指導部は、いかなる停戦協定も恒久的なものでなければ無意味だと主張。
さらに、今も拘束しているイスラエル人の人質約100人の解放条件として、ガザ地区からのイスラエル軍の全面撤退と、同国で拘束されているパレスチナ人の釈放を挙げている。
一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスの政治力と軍事力を壊滅させるまで戦闘を続ける決意だ。
また交渉による解決を目指す国々も、戦後のパレスチナ自治区ガザの統治・再建と安全の保障を誰が担うのかという点で合意はできていない。