焦点:中国株、トランプ関税で再び「偉大」に 避難先で注目高まる

トランプ米大統領(左)による貿易戦争が景気後退懸念を呼び起こす中、グローバル投資家は思わぬ新たな避難場所を見つけた。それは中国株だ。右は中国の習近平国家主席。2019年6月、大阪で撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)
Ankur Banerjee Summer Zhen
[シンガポール/香港 14日 ロイター] - トランプ米大統領による貿易戦争が景気後退懸念を呼び起こす中、グローバル投資家は思わぬ新たな避難場所を見つけた。それは中国株だ。
香港の指標ハンセン指数は、1月のトランプ大統領就任以来17%上昇。これに対して米S&P総合500種は約9%安だ。
ピクテ・アセット・マネジメントの香港駐在シニアエグゼクティブ、アンディ・ウォン氏は、投資家は「TINA(There is NoAlternative to U.S. assets=米国資産に代わるものはない)」から「TIARA(There Is A Real Alternative=真の代替がある)」へと移行していると語った。
<ハイテクけん引>
中国株の上昇の大部分は今年に入ってから29%上昇しているハイテク株がけん引。先週には3年以上ぶりの高値を付けた。多くの強気派はこのほか、消費関連株などにチャンスがあるとみている。
楽観論の主な理由は割安感だ。2021年の高値を30%下回っており、LSEGのデータによると、S&P500の12カ月先予想株価収益率(PER)は20倍だが、ハンセン指数は7倍だ。
割安なのには理由がある。コロナ流行期における政府のハイテク企業取り締まりで多くの投資家が痛手を負い、不動産市場や景気にも疑問が残る。
しかし、人工知能(AI)新興企業ディープシークの衝撃でハイテク株が大きく上昇する中、投資家はさらなる上昇余地があると指摘。中国経済にとって長らく足かせとなっていた消費についても、押し上げの可能性がある財政出動を期待できることも追い風だ。
JPモルガンによると、ここ数週間で香港ドルに換金された米ドルや中国人民元が過去最高額を記録しており、香港株に資金が流入しているという。
<中国は大人>
トランプ氏が関税などで市場を動揺させる中、中国は国内経済と市場に対して景気刺激策や支援策を打ち出している。2月に北京で開催された習近平国家主席と経済界リーダーとの会合は投資家も好感した。
ピクテ・ウェルス・マネジメントのアジア担当チーフストラテジスト、ドン・チェン氏は「今や中国は大人だ」と語った。
モルガン・スタンレーのデータによると、外国籍ファンドの中国株への投資額は2月には38億ドルに達した。それまでは3カ月連続で資金が引き揚げられていた。
トランプ氏が地政学的ライバルとしている中国の株式市場が上昇していることについて、皮肉だと指摘する投資家もいる。
ベアードの米国駐在投資ストラテジスト、ロス・メイフィールド氏は「トランプ政権が外国政府に課している圧力は実際のところ、多くの場合でそれらの国々のアウトパフォームにつながっている」と話す。
<なおトラウマ>
とはいえ、米国との貿易戦争の再燃は、中国の企業情報開示基準を巡る懸念やデフレ圧力とともにセンチメントの重しとなっている。
昨年9月に中国政府が景気刺激策を打ち出して株価は急伸したが、すぐに失速した。
ピクテのチェン氏は、かつて投資不適とされていた中国株について「人々はなおトラウマがある」と語った。