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開発協力×宇宙技術

アマゾン違法伐採の抑制、東南アジアでスマート農業を推進...「開発協力×宇宙技術」が変えていく世界【JICA×JAXA】

2024年2月22日(木)16時00分
※JICAトピックスより転載

中村 また、この取り組みは、JAXAだけで進めていないことがポイントです。フィリピンの事例では民間企業、JAXA、ジェトロ、現地の大学・地方政府・農家が連携して進めています。多様なプレーヤーのグローバルなパートナーシップによってイノベーションが進み、将来的には民間事業化されて、経済の力でサステナブルな活動により社会課題が解決されていくことを目指しています。

高樋 是非、一緒にやっていきたいですね。2023年6月に改定された開発協力大綱では、「共創」と「国際頭脳循環※2」が鍵になると示されています。もちろん伝統的な政府間同士の取り組みへのニーズはあります。ただ今後、さらに地球規模の課題、途上国のさまざまな開発課題の解決に宇宙技術・衛星データを活用していくには、JICAとJAXAがハブとなって、スタートアップや大学・研究機関などさまざまなプレーヤーと連携していくことが重要だと考えています。

そのためには、例えば、人材育成を図るJJ-NeSTをプラットフォームとして立ち上げ、宇宙分野で産業振興を進める地方自治体や大学、地元企業と途上国をつなぐような取り組みも今後進めていきたいです。

※2国際頭脳循環...高度な技能や知識を持つ人々が相互に国を越えて交流・協働することで、グローバルなイノベーションを促進するプロセス

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高樋俊介・JICAガバナンス・平和構築部STI・DX室長

中村 2022年、JAXAが中心となり産学官が集い、衛星地球観測の力で共に未来を創り出すため、「衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)」を立ち上げました。現在、JICAも含め、参加する民間企業や地方自治体など200を超える組織や法人とともに衛星地球観測がさらに社会経済に貢献できるよう連携を始めています。私はこのコンソーシアムでグローバル展開を担当しているので、JICAとタッグを組んで、両機関がこのコミュニティの中心となるハブとなってさまざまな共創を生み出していければと思っています。

宇宙活動は社会課題をサステナブルに解決する手段

高樋 途上国で宇宙機関の設立や自国で衛星を持ちたいといった動きが加速している背景には、国際情勢と安全保障環境に対する問題意識といった側面もあると考えます。宇宙新興国が日本を信頼できるパートナーとして見てくれていることは極めて重要であり、ニーズにも応えていきたいです。

中村 各国には、社会課題解決や経済成長への意欲といった背景もあると思います。これらの課題に対してJAXAはテクノロジーを提供できます。しかし、現地の社会課題やその連携先の情報を持ち合わせません。だからこそJICAとの連携が重要です。

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