最新記事
開発協力×宇宙技術

アマゾン違法伐採の抑制、東南アジアでスマート農業を推進...「開発協力×宇宙技術」が変えていく世界【JICA×JAXA】

2024年2月22日(木)16時00分
※JICAトピックスより転載
「だいち2号」(ALOS-2)のCGイメージ

JAXAの陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)のCGイメージ 画像提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

<10年にわたって防災・農業・保健など多くの分野で連携してきたJICAとJAXA。その連携の中で生み出された成果、今後の可能性について、JICAガバナンス・平和構築部STI・DX室の高樋俊介室長と、JAXAバンコク駐在員事務所の中村全宏所長が語り合う>

JICAとJAXAが連携協定を締結してから2024年4月で10年を迎えます。開発協力×宇宙技術の可能性を引き出したこの連携は、これまで何を生み出したのか、そして今後どのように展開していくのか──。JAXAバンコク駐在員事務所の中村全宏所長と、JICAガバナンス・平和構築部STI・DX室の高樋俊介室長が熱く語ります。

jicajaxa_profile.jpg

左から、高樋俊介・JICAガバナンス・平和構築部STI・DX室長、中村全宏・JAXAバンコク駐在員事務所長

78か国で違法伐採の抑制に貢献

高樋 この10年のJAXAとのさまざまな連携の中でも、大きな成果を挙げることができた点で言うと、やはり、違法伐採の抑制に貢献したJICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)です。天候や雲に影響されずに観測が可能な衛星「だいち2号」のデータを用い、熱帯林減少を早期発見するこのシステムを開発し、運用することができました。

中村 78か国で違法伐採を検出できたことは、JAXA関係者一同も誇りに思っています。テクノロジーを開発し、完成させることはもちろん大事ですが、社会経済や地球環境にとってそのテクノロジーが生かされることこそ、我々研究・開発機関にとって大きな喜びです。ブラジルなどの関係国政府から受けた感謝も大きなモチベーションになりました。

jicajaxa2.jpg

高樋 ブラジルではJJ-FASTの運用と同時にAI技術を用いたアマゾンにおける違法森林伐採の予測システムの構築など、ブラジル政府の森林管理能力の向上を図ることもできました。JICAらしい協力と言えます。78か国の途上国で衛星データをシェアして、違法伐採を抑制したこの一連のプロジェクトは、JICAにとっても、衛星データと宇宙技術、そしてオープンイノベーションを活用した協力の在り方を学ぶ機会にもなりました。

また、宇宙機関を新しく設立する途上国も増えている中、宇宙人材の育成に向けてもJAXAとの連携は欠かせません。2019年から始まった宇宙技術活用ネットワーク構想(JJ-NeST)では、東南アジアを中心に、将来、自国での宇宙技術開発や利用を担う実務者・研究者に、JAXAの研究者をはじめ、民間企業の実務担当者から最先端の技術を学ぶ機会を提供し、日本の大学院への留学も支援しています。

中村 JJ-FASTは、テクノロジーの活用で今ある顕在化した社会課題に対してソリューションを提供し、環境を保護し、問題を改善していく直接的な取り組みです。他方、JJ-NeSTのような人材育成は、10年後、15年後を見据えた未来への取り組みです。日本での学びや培った人脈を生かして彼ら彼女らが活躍し、いつか一緒に仕事ができることを楽しみにしています。

jicajaxa3.jpg

JAXAバンコク駐在員事務所の中村全宏所長

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン

ワールド

国際援助金減少で食糧難5800万人 国連世界食糧計

ビジネス

米国株式市場=続落、関税巡るインフレ懸念高まる テ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中