「地方がいつの間にか見捨てられる......」 能登半島地震が明らかにした日本社会の重苦しい未来
AMラジオ放送を維持できない
地元民放のMRO(北陸放送)は、今年4月1日から、一部の地域でAMラジオ放送の運用を休止する。総務省のウェブサイトでは9月末までの半年間となっているものの、同社のサイトには期限は書いていない。同社のサイトには、AMでは金沢の周波数でカバーするほか、FMで補完できるとする地図が示されている。
これは、AMラジオ放送を続けるコストが負担できない、などの理由によるものであり、MROだけではなく、全国合計13社が休止を予定している。
今回の地震で甚大な損害を受けた地域は、まさに、このAM休止エリアに重なる。
これまで地方の民間放送局は、「ネットワーク費」や「電波料」、あるいは「ネット保証料」などとも呼ばれる分配金によって経営を安定させてきた。
窮地に追い込まれたローカル局の経営
民放は、その収入の多くを広告費に頼っているが、昨今では、マスコミ4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)を合わせた額(2兆3985億円)よりも、インターネット(3兆912億円)のほうが多い。
特に地上波テレビの広告費は低下傾向が続いており、キー局からローカル局に支払える電波料も下がりはすれども、上がりはしない。
MRO自体、売上高は減少気味で、営業損益は広がっており、AMラジオ放送を続けられる体力がなくなってきているのだろう。
こうした状況に対応するため、昨年末にはNHKと民放各局が中継局の設備を共同で使うための全国協議会が発足し、初めての会合が行われている。
「中継局共同利用推進全国協議会」と題した会合では、放送のインフラを維持するための枠組みづくりが進められるとはいえ、果たして、それで解決するのだろうか。