最新記事
日本社会

「地方がいつの間にか見捨てられる......」 能登半島地震が明らかにした日本社会の重苦しい未来

2024年1月19日(金)09時35分
鈴木洋仁(神戸学院大学現代社会学部 准教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

AMラジオ放送を維持できない

地元民放のMRO(北陸放送)は、今年4月1日から、一部の地域でAMラジオ放送の運用を休止する総務省のウェブサイトでは9月末までの半年間となっているものの、同社のサイトには期限は書いていない。同社のサイトには、AMでは金沢の周波数でカバーするほか、FMで補完できるとする地図が示されている。

これは、AMラジオ放送を続けるコストが負担できない、などの理由によるものであり、MROだけではなく、全国合計13社が休止を予定している。

今回の地震で甚大な損害を受けた地域は、まさに、このAM休止エリアに重なる。

これまで地方の民間放送局は、「ネットワーク費」や「電波料」、あるいは「ネット保証料」などとも呼ばれる分配金によって経営を安定させてきた

窮地に追い込まれたローカル局の経営

民放は、その収入の多くを広告費に頼っているが、昨今では、マスコミ4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)を合わせた額(2兆3985億円)よりも、インターネット(3兆912億円)のほうが多い

特に地上波テレビの広告費は低下傾向が続いており、キー局からローカル局に支払える電波料も下がりはすれども、上がりはしない。

MRO自体、売上高は減少気味で、営業損益は広がっており、AMラジオ放送を続けられる体力がなくなってきているのだろう。

こうした状況に対応するため、昨年末にはNHKと民放各局が中継局の設備を共同で使うための全国協議会が発足し、初めての会合が行われている

中継局共同利用推進全国協議会」と題した会合では、放送のインフラを維持するための枠組みづくりが進められるとはいえ、果たして、それで解決するのだろうか。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中