羽田でのJAL機衝突炎上事故に世界の航空業界が注目、その理由は?
日本航空の旅客機、エアバスA350が羽田空港着陸直後に海上保安庁の航空機と衝突して炎上した事故は、炭素繊維(カーボンファイバー)で強化した複合材を使った新世代旅客機の大火災時の安全性を検証する初めての機会になろうとしている。写真は炎上する日本航空機。羽田空港で2日撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)
日本航空の旅客機、エアバスA350が羽田空港着陸直後に海上保安庁の航空機と衝突して炎上した事故は、炭素繊維(カーボンファイバー)で強化した複合材を使った新世代旅客機の大火災時の安全性を検証する初めての機会になろうとしている。
事故現場の写真を見ると、A350の機体は燃え尽きて灰になったことが分かる。運輸安全委員会や警視庁などは事故原因の究明を進めているが、航空業界が熱心に確かめようとしているのは炭素繊維強化複合材の耐久性だ。
エンブリーリドル航空大学の航空安全問題専門家、アンソニー・ブリックハウス氏は、今回の事故は火災だけでなく、衝突時の生存可能性という観点でも炭素繊維強化複合材にとって、初のケーススタディと言える、と述べた。
2000年代初めにボーイングが787ドリームライナー、エアバスがA350をそれぞれ投入した際に大いに期待したのは、軽量の炭素繊維強化複合材を使ったこれらの旅客機が燃費を大幅に節約し、機体を劣化させにくくして保守点検の負担が少なくなるという点だった。
ドリームライナーは就航直後、バッテリーの不具合による火災の問題で2013年初めに一時運航停止となったほか、13年7月にはエチオピア航空の機体で救命無線機のショートによる火災が発生し、改修を迫られた。
ただ、これらの火災では、機体の外殻が崩れ去ったわけではない。
A350は、胴体や尾翼と主翼の大部分など全体の53%に炭素繊維強化複合材が使われている。
複数の専門家は、機体構造が維持されていた間に、乗員乗客全員が安全に脱出したという事実は、特別な条件付きで認証されたこの複合材に対する信頼を新たにすることになると話す。
とはいえ現時点ではまだ、A350の外殻がどのように火災から一定時間持ちこたえたのか、あるいはどんな技術的教訓が得られるか、全面的な結論を導き出すのは時期尚早だとくぎを刺した。