最新記事
航空機

羽田でのJAL機衝突炎上事故に世界の航空業界が注目、その理由は?

2024年1月5日(金)15時35分

ブリックハウス氏は、今回の事故を、13年7月にアシアナ航空のボーイング777が着陸に失敗して火災となり乗客3人が死亡した事故と比較することで、炭素繊維強化複合材とアルミニウム素材の火災における推移の違いに関する有効な知見が得られるのではないか、との見方を示した。

主に炭素繊維強化複合材でつくられた商用機として火災で損壊したのは、今回のA350が初めて。だが、この複合材が使用された軍用機ではスペイン軍のエアバスA400Mが15年に墜落炎上したケースがある。スペイン軍は事故調査結果を公表しておらず、日本の当局がこの情報を入手できるかどうかも分からない。

耐火性で優位な炭素繊維強化複合材

航空業界の情報を扱うリーアム・ニューズ・アンド・アナリシスのビヨルン・フェルム氏は、炭素繊維強化複合材の機体はアルミ製機体に対して幾つかの優位性があると説明する。

例えば、アルミは摂氏約600度で溶解して熱を伝導するが、炭素繊維はその約6倍の高熱に耐え、溶解せず炎も出さずにくすぶり続けるという。

エアバスは19年に公表した消防士向けの指針で、A350は従来のアルミ製機体と「同等の安全性のレベル」があると証明するとともに、各種試験では火災の浸透への「抵抗力が増大した」ことが示されたと述べた。

だが、エアバスは強烈な熱に長時間さらされた場合、炭素繊維強化複合材の表面が残っている段階でさえ、機体の構造的な一体性が失われる恐れがあるとも指摘した。

TBSが消防当局の話として伝えたところでは、A350は6時間余りも燃え続けた後、ようやく完全に火を消し止めることができたという。

フェルム氏は「羽田空港の消防隊はなぜ(長らく)消火できなかったのか、検討する必要がある」と述べた。

エアバスによると、以前の試験で炭素繊維強化複合材がアルミと同じぐらいの耐火性を持つことが判明している。広報担当者は、18年に当局立ち会いの下でA350─1000の完全避難テストも行ったと付け加えた。

ドイツの火災安全対応企業の幹部は、複合材の可燃性にはさまざまな要素が影響を及ぼす可能性があるとし、具体的に構造や繊維素材、使用される難燃剤の層などを挙げる。

この幹部は「一つ確実に把握できるのは、ケロシンの燃焼による熱がこれほど強烈であれば、アルミでも耐えられないということだ」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

MSCI新興国指数でインド株ウエートが最高更新、資

ビジネス

海外勢の米国債保有、3月は過去最高更新 日本の保有

ビジネス

TikTok米事業買収を検討、ドジャース元オーナー

ワールド

ガザ休戦交渉、イスラエルの条件修正が暗礁原因=ハマ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中