羽田でのJAL機衝突炎上事故に世界の航空業界が注目、その理由は?
ブリックハウス氏は、今回の事故を、13年7月にアシアナ航空のボーイング777が着陸に失敗して火災となり乗客3人が死亡した事故と比較することで、炭素繊維強化複合材とアルミニウム素材の火災における推移の違いに関する有効な知見が得られるのではないか、との見方を示した。
主に炭素繊維強化複合材でつくられた商用機として火災で損壊したのは、今回のA350が初めて。だが、この複合材が使用された軍用機ではスペイン軍のエアバスA400Mが15年に墜落炎上したケースがある。スペイン軍は事故調査結果を公表しておらず、日本の当局がこの情報を入手できるかどうかも分からない。
耐火性で優位な炭素繊維強化複合材
航空業界の情報を扱うリーアム・ニューズ・アンド・アナリシスのビヨルン・フェルム氏は、炭素繊維強化複合材の機体はアルミ製機体に対して幾つかの優位性があると説明する。
例えば、アルミは摂氏約600度で溶解して熱を伝導するが、炭素繊維はその約6倍の高熱に耐え、溶解せず炎も出さずにくすぶり続けるという。
エアバスは19年に公表した消防士向けの指針で、A350は従来のアルミ製機体と「同等の安全性のレベル」があると証明するとともに、各種試験では火災の浸透への「抵抗力が増大した」ことが示されたと述べた。
だが、エアバスは強烈な熱に長時間さらされた場合、炭素繊維強化複合材の表面が残っている段階でさえ、機体の構造的な一体性が失われる恐れがあるとも指摘した。
TBSが消防当局の話として伝えたところでは、A350は6時間余りも燃え続けた後、ようやく完全に火を消し止めることができたという。
フェルム氏は「羽田空港の消防隊はなぜ(長らく)消火できなかったのか、検討する必要がある」と述べた。
エアバスによると、以前の試験で炭素繊維強化複合材がアルミと同じぐらいの耐火性を持つことが判明している。広報担当者は、18年に当局立ち会いの下でA350─1000の完全避難テストも行ったと付け加えた。
ドイツの火災安全対応企業の幹部は、複合材の可燃性にはさまざまな要素が影響を及ぼす可能性があるとし、具体的に構造や繊維素材、使用される難燃剤の層などを挙げる。
この幹部は「一つ確実に把握できるのは、ケロシンの燃焼による熱がこれほど強烈であれば、アルミでも耐えられないということだ」と述べた。