最新記事
香港

もはや中国本土レベル...「民主の女神」周庭(アグネス・チョウ)が体を張ってみせた「香港の終焉」

2023年12月11日(月)14時07分
エリック・ライ
周庭(アグネス・チョウ)

2019年に香港デモへの支援を求めて来日した周庭(中央) NEWSWEEK JAPAN

<2年半の沈黙を破った「香港の民主の女神」はカナダに「自主亡命」した。香港でビジネスを行う外国人投資家も他人事ではない>

香港で国家安全維持法(国安法)が施行されてから3年、当局は今後も新たな立法措置を通じて法や司法を武器化し、自由で開かれた香港社会を抑圧するのではないかと懸念する識者は多い。

特に懸念されるのが、当局による法律や権限の恣意的な運用だ。この種の行為が香港にさらなる不確実性をもたらし、法の支配を損なうことは避けられない。

その最も顕著な例が、当局の保釈条件を無視して「自主亡命」を宣言した周庭(アグネス・チョウ)のケースだろう。香港における民主化運動の最年少指導者の1人で、日本でも有名な周の声明は、上記の懸念を裏付けるものだ。

SNS上の声明によると、周は9月半ば、カナダの大学院留学のために香港からトロントに向かった。彼女は保釈の条件として12月に香港警察に出頭することを求められていたが、香港に戻らないことを決めたという。

周は2020年8月、他の9人の活動家と共に逮捕された。同年施行の国安法に基づき、国家の安全を脅かす外国勢力と結託した罪に問われたのだ。その後保釈されたが、パスポートは没収された。

今年、カナダの大学院修士課程に入学した周は、当局から出国の条件を提示された。

具体的にはパスポートを取り戻すために「ざんげの手紙」を書くよう求められ、その後警察と共に中国本土へ行き、展示会を見学して中国の「偉大な発展」を称賛する手紙を書くことも要求された。

起訴や公判の前に「ざんげの手紙」を書くことは、中国本土では珍しくない慣行だ。ジャーナリストや活動家、ビジネスマンも身柄拘束を解いてもらうために、この種の手紙を当局に提出しなければならない。

渡航書類を返還する条件として中国を称賛することは、個人の自由と安全を餌に圧力をかける中国当局の戦術として知られている。

周の主張が事実なら、今の香港では政治が法治の上にあることを示す新たな証拠になる。犯罪の容疑者が警察の前で愛国心をアピールすれば当局は満足して自由の身にしてくれるというわけだ。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中