もはや中国本土レベル...「民主の女神」周庭(アグネス・チョウ)が体を張ってみせた「香港の終焉」
2019年に香港デモへの支援を求めて来日した周庭(中央) NEWSWEEK JAPAN
<2年半の沈黙を破った「香港の民主の女神」はカナダに「自主亡命」した。香港でビジネスを行う外国人投資家も他人事ではない>
香港で国家安全維持法(国安法)が施行されてから3年、当局は今後も新たな立法措置を通じて法や司法を武器化し、自由で開かれた香港社会を抑圧するのではないかと懸念する識者は多い。
特に懸念されるのが、当局による法律や権限の恣意的な運用だ。この種の行為が香港にさらなる不確実性をもたらし、法の支配を損なうことは避けられない。
その最も顕著な例が、当局の保釈条件を無視して「自主亡命」を宣言した周庭(アグネス・チョウ)のケースだろう。香港における民主化運動の最年少指導者の1人で、日本でも有名な周の声明は、上記の懸念を裏付けるものだ。
SNS上の声明によると、周は9月半ば、カナダの大学院留学のために香港からトロントに向かった。彼女は保釈の条件として12月に香港警察に出頭することを求められていたが、香港に戻らないことを決めたという。
周は2020年8月、他の9人の活動家と共に逮捕された。同年施行の国安法に基づき、国家の安全を脅かす外国勢力と結託した罪に問われたのだ。その後保釈されたが、パスポートは没収された。
今年、カナダの大学院修士課程に入学した周は、当局から出国の条件を提示された。
具体的にはパスポートを取り戻すために「ざんげの手紙」を書くよう求められ、その後警察と共に中国本土へ行き、展示会を見学して中国の「偉大な発展」を称賛する手紙を書くことも要求された。
起訴や公判の前に「ざんげの手紙」を書くことは、中国本土では珍しくない慣行だ。ジャーナリストや活動家、ビジネスマンも身柄拘束を解いてもらうために、この種の手紙を当局に提出しなければならない。
渡航書類を返還する条件として中国を称賛することは、個人の自由と安全を餌に圧力をかける中国当局の戦術として知られている。
周の主張が事実なら、今の香港では政治が法治の上にあることを示す新たな証拠になる。犯罪の容疑者が警察の前で愛国心をアピールすれば当局は満足して自由の身にしてくれるというわけだ。