最新記事
健康

【検証】「メガネの長期使用で視力が落ちる」というネット情報は本当?

Correcting Vision Issues

2023年11月10日(金)13時30分
アナ・ギブズ(科学ジャーナリスト)

世界的に急増する近視

ただし、成長期の子供の場合は話が違う。近視の子がメガネを使わなかったり、度が弱すぎるメガネを使用すると、近視が進むことがある。見えにくいために無意識に焦点を合わせようと目の中の筋肉(内眼筋)を酷使するからだ。

眼球は縮まないが、肥大することはあると、ジョンズ・ホプキンズ大学医学大学院で検眼を教えるブライス・セントクレアは言う。そのため眼球の奥行きが一層深くなり、近視の度が進むことがある。

近視は近年、急増している。1970年代にはアメリカ人の25%が近視だったが、近年は40%超に上る。世界では2050年までに人口の半分が近視になると予想される。

子供の近視は成長につれて悪化する傾向がある。これを防ぐため眼科医は小児用の特殊なコンタクトレンズの使用を勧めるか、近視の進行を遅らせるアトロピン入り点眼薬を処方する。

また子供の場合、度が強すぎるメガネを与えられるケースも少なくない。子供は内眼筋の緊張が取れにくく、正確な検眼が難しいからだ。度が強いメガネをかけても視力が落ちる心配はないが、頭痛などの症状が出ることはある。その場合、一時的に内眼筋を麻痺させる調節麻痺剤を点眼して検眼すれば、正確な度数が分かる。

メガネの長期的な影響を調べた疫学調査はあまり行われていない。比較対照のためメガネなしの生活を強いられた被験者が交通事故などで「死にかねないからだ」と、スターは冗談半分に言う。

メガネなしでハンガー・ゲームを強いられたら、私は真っ先に死ぬだろう。でも、度の合った矯正レンズがあれば怖いものなしだ!

©2023 The Slate Group

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


試写会
米アカデミー賞候補作『教皇選挙』一般試写会 30組60名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中