イスラエル軍もハマス軍事部門も「直面したことがない事態」...イスラエル精鋭部隊「サエレット・マトカル」はどう動くのか?
A RESCUE OPERATION LIKE NEVER BEFORE
そのバラクは、過去の栄光と今日のイスラエルがガザ地区で直面している前例のない人質危機を同列に扱ってはいけないと警告する。
「単純な繰り返しではない」。バラクは本誌にそう語った。
「どのような作戦であれ、厳密に状況をコントロールするには極めて正確な、そして膨大な情報が必要だ。テロ組織と対峙してきたこの長い年月で、私たちは多くの教訓を学んだ。敵がどこにいるかを知らなくても部隊を編成し、展開させるすべをね」
現在81歳のバラクと74歳のネタニヤフの政治的立場は異なるので、互いについての発言には色が付いている。だが現在のイスラエルが直面する危機に関しては、「経験豊富」なネタニヤフなら「対応できる」とバラクも高く評価する。
ネタニヤフが「無責任な行動」をしてきたのは事実だが、今はイスラエルが「建国以来おそらく最も厳しい打撃」を被っている時期だから、政治的な争いをしている場合ではないとも言った。
ハマスによる10月7日の奇襲攻撃は、最先端の防衛力と情報収集能力を誇るイスラエルの意表を突き、1400人以上の国民が殺害された。
イスラエル側の犠牲者の大半は民間人とされるが、兵士の犠牲も300人以上で、サエレットの隊員が少なくとも9人は含まれている。隊員を生還させる能力が高いことで知られるこの精鋭部隊で、ここまでの犠牲が出るのは珍しい。
直近の世論調査で自身の支持率が30%を割り込むなか、この歴史的な危機に直面したネタニヤフは野党に呼びかけ、挙国一致の戦時内閣を組むことにした。
その閣僚には、野党党首のベニー・ガンツ、元国防軍参謀総長のガディ・エイゼンコット、現国防相のヨアブ・ガラント、安全保障担当顧問のツァヒ・アネグビ、戦略相のロン・ダーマーと、軍隊経験豊富な5人が含まれる。ネタニヤフの軍事秘書官アビ・ギルも意思決定のサークルに加わっている。
「決定はこのグループ内で下されるだろう」と、11年から13年までネタニヤフの国家安全保障担当顧問を務めたヤーコフ・アミドローは言い、ネタニヤフは議論を強引に推し進めるのではなく、幅広い合意を求めるだろうと考える。
「10月7日の失敗を経た今日の状況では、支持は広ければ広いほどいいということを彼は理解している」
だが、このグループが人質危機を解決するための最善策はサエレット・マトカルの派遣だという決断を下しても、ネタニヤフが前線で指揮を執れるわけではない。