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中東情勢

中東情勢、再び緊迫の時代へ......ハマース、イスラエル、シリアの軍事対立が示すもの

2023年10月13日(金)16時30分
青山弘之(東京外国語大学教授)

砲撃と報復の連鎖

2回目も10月10日に行われた。この侵犯行為は、おそらくは10日未明の爆撃への報復と見られる。

イスラエル軍のアヴィハイ・アドライ報道官は同日午後10時半頃、シリア領内からイスラエル領内(占領下ゴラン高原)に向けて多数の砲撃があったと発表、その直後にイスラエルが、砲弾が発射されたシリア領内の複数ヵ所を砲撃したと付言した。

アドライ報道官のXでの発表(10月10日)

英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、イスラエルに砲撃を行ったのは、ヒズブッラーとともにシリア国内で活動しているパレスチナ諸派で、イスラエル軍が砲撃したのは、シリア政府支配地(スィースワーン地区)内のシリア軍の拠点や装備だったという。

なお、シリアで活動するパレスチナ諸派は、イスラーム聖戦機構、ファタハ・インティファーダ、パレスチナ人民解放戦線総司令部派(PFLP-GC)、パレスチナ民主解放戦線(DFLP)、パレスチナ人民闘争戦線などが有力である。

ダマスカスとアレッポの空港爆撃

そして3回目の侵犯行為が、10月12日のダマスカス、アレッポ両国際空港に対する爆撃だった。

シリアの国防省がフェイスブックの公式アカウントを通じて発表した声明によると、イスラエル軍は10月12日午後1時50分、両国際空港に対して多数のミサイルで爆撃を行い、これによって両空港の滑走路が損害を受け、利用不能となった。イスラエルによる爆撃は通常は深夜に行われるが、今回は白昼堂々の危険極まりない犯行だった。

スプートニクス・アラビア語版がテレグラムを通じて伝えたところによると、イスラエル軍は占領下のゴラン高原上空からミサイルを発射し、爆撃を行った。

イスラエルの政府や軍がシリア領内に対する爆撃を公式に認めることは稀有である。だが、両国際空港に対する爆撃については、イスラエルのチャンネル10が伝えたところによると、イスラエル軍のアヴィハイ・アドライ報道官が、シリア領内からの砲撃への報復で、近日中にさらなる標的を破壊されると述べた。

複数のメディアが、イランがシリアを経由してヒズブッラーに武器や装備を供与するのを阻止するのが爆撃の狙いだと報じた。

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