なぜ「地中海食」でうつが改善するのか?...脳細胞とマイクロバイオームの関係

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<医師でBBCを拠点に活躍する科学ジャーナリストが世界最先端の知見を結集。なぜうつと腸が関係あるのか?>
医師でBBCを拠点に活躍する科学ジャーナリストが世界最先端の知見を結集し、「睡眠制限療法」と食事術を説く『4週間で誰でも寝つきがよくなる 最速入眠プログラム』(CCCメディアハウス)より「第5章 快適に眠るための食」を一部編集・抜粋。
地中海食が気分に与える影響とは?
地中海食が気分に与える影響
わたしはディーキン大学(メルボルン)フード・アンド・ムード・センター所長として精力的に活動しているフェリス・ジャッカ教授の大ファンだ。
ジャッカ教授とそのチームは、食べ物が脳や気分、心の健康に与える影響を明らかにしようという先駆的な研究を行っており、大いに感銘を受けている。
ジャッカ教授の研究のことは、2017年に発表されたSMILEs 試験(*1)の結果を通して知った。健康的な食事にうつ病の改善効果があるかどうかを調査した、世界で初めての介入研究である。本当に画期的な研究で、これまでに例がないだけに、道のりも険しいものだったはずだ。
こうした研究を実現するにはかなりの時間がかかるため、今振り返ってみてもこれは驚異的な研究だといえる。ジャッカ教授らは当初、中度から重度のうつ病患者180人を対象に研究を始める予定だった。だが、3年間の試行錯誤の末、被験者は67人にとどまることになった。
被験者の人数が制限されると、介入による影響が立証しづらくなるという問題点が生じる。
ジャッカ教授は、結果が「重要」とみなされるためには、食事が睡眠におよぼす影響がそれこそ劇的なものでなければならないとわかっていた。