ミャンマー軍政、難民収容施設を攻撃 13人の子供含む29人が死亡
今回の難民キャンプへの攻撃について抵抗勢力のNUGは「軍政による今回の攻撃は非人道的で人道に対する罪であると同時に戦争犯罪であり、強く非難する。NUGはカチンの人々を強く支持するとともに多数の人命が失われたことの悼みを共有する」としたうえで「国連決議に従いNUGは国際社会に向け、人道に対する罪を犯したテロリストである軍政へ適切かつ強力な行動をとるとともに、これ以上の軍政による残虐行為を防止するためにミャンマー国民と協力することを強く求める」との声明を明らかにしている。
1年前にはコンサート会場の爆撃も
ちょうど1年前にミャンマー軍はカチン州カパント村で2022年10月23日に行われていた少数民族武装勢力「カチン独立機構(KIO)」が主催するコンサート会場を爆撃。カチン族の歌手を含め会場にいた聴衆、KIO幹部など80人が死亡し、100人以上が負傷した。
この時は戦闘機3機による空からの爆撃だったが、軍政は攻撃を否定して責任をKIOに押し付けたのだった。
この攻撃での死者80人はクーデター以来、民間人をターゲットにした作戦で最大の犠牲者を出したといわれている。
ミャンマーの人権状況を監視している「政治犯支援協会(AAPP)」によると10月10日現在、クーデター以降ミャンマー軍政によってこれまでに殺害された市民は4144人、身柄を拘束された市民は25274人に達し、このうち19677人が現在も拘束中ないし有罪判決を受けて服役中としている。
ミャンマーでは治安維持が確保できない軍政が焦りのためか、各地の戦闘で一般住民や武装市民組織メンバーに対する残虐な犯罪行為が相次いでいるとの報告がある。
一方では、長引く内戦状態や同じ国民に銃を向けることに嫌気がさして軍や警察を離脱する兵士、警察官も増加しているという。
人権団体やNUGなどによるとクーデター以来軍を離脱した兵士は約1万5000人にも及び、軍の各部隊では定員割れが深刻で、公務員に対して軍に参加するよう軍政は呼びかけているという。
これに対しNUG側は報奨金を提示して軍兵士に離脱や武装市民組織への寝返りを求めている。
こうした現状が軍による空爆や砲撃といった兵士の消耗が低い作戦を多用することにつながっているとの見方も出ている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など