ポーランドのエネルギー革命、原発への巨大投資をもたらす過去の幻影
Poland’s Nuclear Dreams
ポーランド中部のベウハトゥフ発電所は欧州最大の石炭火力発電所 OMAR MARQUES/GETTY IMAGES
<対立を繰り返してきたリベラルと保守だが原発導入では一致。ただしEUで最も化石燃料に頼る国での実現は不透明だ>
ポーランドに今後、さまざまな変化が起きそうだ。10月15日に行われた総選挙の結果、リベラル派「市民連立」が率いる野党連合が政権を握る可能性が高まってきたのだ。対EU関係から女性の権利に至るまで、長いこと政権を握ってきた保守派と市民連立の間には大きな隔たりがある。
だが国内政策で両者の意見が一致している分野が少なくとも1つある。近く原子力エネルギーを導入することだ。
筆者はこの10月にポーランドの首都ワルシャワを訪れ、各省庁やシンクタンクを取材した。そこで話を聞いた人々のほとんど全てが、原発導入を大々的に進める計画を誇らしげに語った。
その計画が道理にかなっているかどうかは、また別の問題だが。ポーランドはエネルギーの80%近くを化石燃料に頼っている。EUで最も高い数字だ。
ドイツとポーランドの国境地帯を流れるオーデル川の両岸を見ると、ドイツ側は巨大な風力タービンや太陽光パネルがずらりと並んでいるのに、ポーランド側はまばらだ。
だが、もうポーランドは気候変動の危機を否定も無視もしていない。それどころか、この問題の答えを手にしているとさえ自負している。
「わが国のエネルギー政策は、やがて再生可能エネルギーと原発の2本柱になる」と、ポーランドのアダム・ギブルジェチェトウェルティニュスキー気候環境副大臣は語った。
保守派の現政権は先頃、今後数年でフルサイズの原子炉8基と、最大100基の小型モジュール炉(SMR)を建設する計画を発表した。既にポーランド初の原発となる加圧水型炉(PWR)1基の建設準備が始まっており、9月には国営エネルギー企業が米エネルギー大手ウェスティングハウス・エレクトリックとベクテルの企業連合との間でAP1000加圧水型炉の開発契約を結んだ。
10年後には稼働開始の予定で、建設費は200億ドルを超えそうだ。