『スラダン』を生んだ井上雄彦は、それでも中国「80後」世代の神
Takehiko Inoue
ミステリアスな原作者
映画が公開される4月に入ると、宣伝の前哨戦が始まり、SNS上でスラムダンク関連のつぶやきが目立ち始めた。
「午前0時の上映、絶対応援しに行くよ〜」「われわれ80後の青春がよみがえった〜」「湘北応援しに行くぞ〜」。街中にはスラムダンクのラッピングバスも走り回り、ショッピングモールの液晶大画面には予告編が流れる。4月15日には北京大学体育館で先行上映され、中国人声優が舞台挨拶した。
80後だけでなく、今回の映画でスラムダンクを初めて知ったZ世代の若者も多いが、 それは中国なりの大胆な試みの成果でもあった。
『THE FIRST SLAM DUNK』は、中国のZ世代が一番集まるSNSアプリQQにあるメタバース空間「スーパーQQショー」でチケットを販売した。ここに期間限定の映画宣伝部屋をつくり、予告編を流してZ世代ユーザー向けに発信。簡単にチケットを買える設定だ。
このメタバース上の宣伝に携わった80後の開発スタッフは「自分の青春をZ世代にも伝えられるとは夢にも思わなかった」と話す。
実は原作者である井上雄彦氏個人に関する中国語の報道は少なく、ファンの中ではミステリアスな「神」と捉えられている。ただ、90年代にテレビアニメが社会現象になってから、 30年近くたった今また映画が社会現象になる作品はスラムダンクしかない。作品の舞台になった江ノ島電鉄の鎌倉高校前駅近くの踏切には、今も中国からの観光客が絶えず訪れる。こんな作品もスラムダンクのほかにはない。
井上雄彦
Takehiko Inoue
●漫画家