『スラダン』を生んだ井上雄彦は、それでも中国「80後」世代の神
Takehiko Inoue
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<それでも中国人がスラダンと原作者を愛する理由ーー 本誌「世界が尊敬する日本人100」特集より>
今年4月20日、映画『THE FIRST SLAM DUNK』は日本より4カ月遅れて中国全土で劇場公開が始まった。前売り券の販売だけで1億元(約20億円)を突破し、興行収入は14日間で6億元(約120億円)に。中国では映画の上映期間は通常1カ月だが、上映延長を3回も申請し、中国の6大映画レビューサイトで平均レビュー9.3を獲得した(10点満点)。つまり中国でも、とにかく『灌籃高手(スラムダンク)』は大人気だ。
1980年代に生まれ、まだ中国に娯楽が少ない時代に育った「80後」世代にとって、アニメ版『スラムダンク』は青春そのものだった。 95年に香港のテレビ局が放映権を獲得。香港、深圳、広州など南方で放送が始まり、98年に中国全土へと広がった。当時の中国の小中学生はほぼ全員と言っていいほど『スラムダンク』でスポーツの感動を味わい、バスケットボールも人気のスポーツになった。
彼らにとっては、学校の授業が終わると走って家に帰ってアニメを見て、また走って学校の自習室に戻るのが日常の光景だった。「学校に遅れる!」と思って走ったら、遅刻した「同志」がいっぱいいて、「自分だけじゃない」とホッとして教室に入る。みんなざわざわとスラダンの話をしてなかなか席に着かず、先生がニコニコして興奮した生徒たちを眺めている――。
家に録画機があるクラスメイトがいると、週末にはその子の家に集まって「再放送」を見る。そのうち、日本語が分からないのに、みんなエンディングテーマ曲の「世界が終るまでは...」を日本語で歌えるようになった。