最新記事
日本政治

「サラリーマンの税金は安すぎ!?」 岸田政権が給与所得控除の引き下げを画策、年収400万円で20万円の負担増か

2023年8月21日(月)18時00分
山田真哉(公認会計士・税理士・作家) *PRESIDENT Onlineからの転載
岸田文雄首相

さまざまな政策実現のためには会社員の給与所得控除の引き下げは止むを得ないのか? REUTERS


岸田政権は「サラリーマン増税」の検討を進めている。その背景にはなにがあるのか。公認会計士の山田真哉さんは「会社員の経費は収入の3%が実態だが、給与所得控除は収入の3割もあり、主要国の水準と比べても高い。政府は働き方による税負担の差をなくそうとしている」という――。


物価急上昇のさなかの「サラリーマン増税」に怒りの声

政府の税制調査会(政府税調)が「サラリーマン増税」を議論したことが報じられ、「会社員だけに増税するのか、ふざけるな!」という大きな反発が起きています。

実際に政府税調の答申(レポート)を読んでみると、「通勤手当」への課税や「退職金」への増税など、今後さまざまな増税を予定していると読み取れます。

ただ、議論の核心はあくまで「会社員は税制上優遇されている」という点です。焦点は「給与所得控除の引き下げ」で、これが実施されれば、会社員にとってかなりの負担増が予想されます。

私のYouTubeチャンネル「オタク会計士ch」でも解説しましたが、こちらでもあらためてこの問題について取り上げたいと思います。

政府税調が提言「日本の会社員の税金はかなり安い」

「日本の会社員の税金は、主要国と比較してかなり安い。相当手厚い仕組みである」

これが政府税調のレポートから読み取れる政府の認識です。どういうことか、具体的にご説明してみます。

会社員の収入は「給与所得」と呼ばれています。年末に会社から「給与所得の源泉徴収票」をもらいますが、この中に給与所得の額が書かれています。

年収400万円の場合、給与所得控除124万円を引いた276万円が給与所得となります。

この276万円から所得控除105万円(基礎控除48万円+社会保険料控除57万円(※1))を引いた約170万円を「課税所得」と言い、所得税はこの課税所得にかかってきます(「住宅ローン控除」や「外国税額控除」の対象であれば、さらに税金を引くことができます)。
※1 年齢や加入されている健保組合等によって変わります

課税所得が約170万円の場合、所得税は約8万円です。意外と少ないですが、これに住民税約18万円が追加されますので、合計の納税額は26万円程度。これが給与から天引きされます。

年収400万円で約26万円ですから、大体ひと月分の給料を納税している、くらいの感覚ではないでしょうか。

図表1 会社員の税金(給与所得)

筆者作成

自動車
DEFENDERとの旅はついに沖縄へ! 山陽・山陰、東九州の歴史文化と大自然、そして沖縄の美しい海を探訪するロングトリップ
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

再送-AIが投資家の反応加速、政策伝達への影響不明

ビジネス

米2月総合PMI、1年5カ月ぶり低水準 トランプ政

ワールド

ロシア、ウクライナ復興に凍結資産活用で合意も 和平

ワールド

不法移民3.8万人強制送還、トランプ氏就任から1カ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中