教育は「1位→47位」、ジェンダー後退国・日本で出版された希望になるかもしれない本
一方、性別役割意識についての調査で、男女ともに「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」という回答が1位で、「女性は結婚によって、経済的に安定を得る方が良い」は女性が5位、男性が9位だった(2022年度性別による無意識の思い込み〔アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究)。経済分野における男女格差解消には、まず無意識の思い込み解消から始めるほかないと考えさせられる。
そして、識字率や高等教育就学率の男女比を反映する教育分野は47位(99.7%)で、2022年には男女平等だった1位から後退している。
東京都立高校の入学試験では男女別定員があるため、女子の合格ラインが男子より高くなり、男女別定員がなければ合格していたはずの女子が何百人といた。男女別定員が撤廃されるのは2024年度入試からだ。
全国の807大学の在学者のうち、女子は44.5%(2022年度学校基本調査)。内訳は学部45.6%、大学院32.7%で、男子の大学院進学率は女子の2倍以上というデータもあった。女子の理工系分野進学率となると、さらに下がる傾向にある。そのため、政府は「リケジョ」育成の推進を始めた。
女子が大学院に占める割合が3割程度にとどまり、分野によってはそれすら下回る状況を考えると、99.7%という日本の教育分野のジェンダー・ギャップ指数をもって男女平等を達成していると言えるのだろうか。そうだとは必ずしも言えない状況が浮かび上がる。
『第二の性』と『82年生まれ、キム・ジヨン』の文庫発売の意味
このような状況にある日本で2023年春、ジェンダーを巡る問題について考えるための本が文庫で出版されたことは希望かもしれない。
シモーヌ・ド・ボーヴォワールによるフェミニズムの古典で、1949年に刊行されると世界的ブームを巻き起こした『第二の性』(河出文庫、リンク先は『決定版 第二の性 I 事実と神話』)。そして、韓国で2016年に刊行されると136万部を突破し、32の国・地域で翻訳され、日本で29万部のベストセラーとなった小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳、ちくま文庫)である。2冊とも女性が人生で直面するあらゆる差別を描き出している点が共通している。
多くの韓国文学を日本に紹介する第一人者で、『82年生まれ、キム・ジヨン』を翻訳した斎藤真理子さんは文庫版の訳者あとがきに、作者の主張のポイントとして「経済的に恵まれていても良い家族がいても、社会のシステムに問題がある限り、この問題は解決できないという点にあります」と書いている。主人公の恋愛の描写がないのも、愛でどうにかなる問題ではないことを示していると触れていた。
生まれた時代やその時代の価値観に縛られず、影響を受けずに生きている人はいない。社会構造そのものを直視しなければ、どうにもならないとじりじり迫る。
『82年生まれ、キム・ジヨン』が国や年代を超えて共感される理由がまさにここにある。そして、単に共感で終わるのではなく、社会システムの欠陥や問題の本質を見極める目を養えと問うのだ。
衝撃か、納得か。あなたは日本のジェンダー・ギャップ指数をどう解釈するだろうか。
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