経済的困窮からアルバイトを迫られる高校生に救いの手を
高校生のアルバイトというと遊興費目的というイメージもあるが、切実な理由によるものも少なくない fizkers/iStock.
<家庭の経済状況が厳しい高校生ほど、特に女子ではアルバイト経験が高い>
NPO法人キッズドアの調査によると、アルバイト経験のある高校生は4割ほどで、理由の26%が「受験や進学のための貯金」、15%が「授業料や修学旅行の費用」だという。高校生のアルバイトというと遊興費目当てのイメージがあるが、切実な理由によるものも少なくないようだ。昨今の物価高の影響もあるだろう。
高校生のアルバイト実施率は、基幹統計の『国勢調査』からも算出できる。2020年のデータによると、15~17歳のうち労働力状態が「通学の傍ら仕事」の者は9万119人、「通学」の者は284万3897人。両者の合算に占める前者の割合(3.07%)が、アルバイト実施者率とみなせる。9月下旬の1週間に仕事をした者に限っているため、数値は低く出ているが、アルバイトをしている生徒の量的規模の指標と見ていい。
東京都内の23区別に数値を計算すると、1.24%から5.76%までの開きがある。同じ大都市にもかかわらず、高校生のアルバイト実施率はエリアによって異なり、かつ各区の社会経済特性と相関している。<図1>は横軸に住民1人当たりの税金負担額、縦軸に高校生のアルバイト実施率をとった座標上に、23区のドットを配置したグラフだ。
ご覧のように、右下がりの傾向がみられる。住民税の課税額が低い、つまり住民の経済力が低いエリアほど高校生のバイト率が高い傾向で、相関係数はマイナス0.75にもなる。家庭の貧困とアルバイトの関連をうかがわせるデータだ。
アルバイトをするのは悪いことではない。諸外国では、アルバイトをする高校生の割合は日本より高いし、裕福な家庭の子弟も、社会勉強を兼ねて大学進学の費用を自分で稼いだりしている。高校生ともなれば、修学旅行の費用くらいアルバイトをして自分で稼いだらどうか、とう声もある。
だが学業に支障が出るとなると、学習権の侵害となる。子どもの教育機会や健全な成長を妨げる「児童労働」で、家庭の経済力と関連しているとなると、教育格差の問題の性格も帯びてくる。有害な働き方をしている生徒がいないか、実態を把握し、その結果を踏まえて高校就学支援金制度の見直し等も行う必要がある。