人気を当てにしない「親日」尹大統領、1年目の成績表の中身とは?
Yoon’s Polarizing First Year
そのため、尹は大統領として政権を運営しながら、同時に党内の掌握に努めるという異例の対応をせざるを得なかった。本来、そうした調整は候補指名を受けた直後、もしくはその前に行われるべきものだ。
だが、党内に有力な指導者がいないおかげで勝ち上がれたという事情は、それだけ党内の敵を排除するのも、追い落とすのも容易だということをも意味していた。
レームダック化の危機
尹にとって、党内で最大のライバルは李俊鍚(イ・ジュンソク)だった。彼は入党して間もない21年6月に、36歳の若さで党の代表に選ばれていた。反フェミニズムの急先鋒と目されていた李は、韓国の男性若年層の間に支持基盤を広げることを期待されていたが、一方で世代間の対立をもたらした。
尹と李は予備選で激しい論争を繰り広げた。そして尹が勝利するとすぐ、党は李に対して厳しい態度に出た。李に「性的接待」の証拠隠滅を図った疑惑が浮上すると、党は彼の党員資格を停止するという懲戒処分を下した。
その後、尹が当時の党代表代行に送ったメッセージから、尹が李を批判していることも明らかになった。四面楚歌となった李は、党員資格停止をさらに1年延長する処分を下され、これにより来年の総選挙への出馬も事実上不可能になった。
さて、この先はどうなるか。まず、死活的に重要なのは来年4月の総選挙だ。自身の下で与党をまとめ、一丸となって選挙戦に臨めるかどうか。
失敗して野党・共に民主党が議会の過半数を維持する事態になれば、尹はその後の3年をレームダック(死に体)で過ごすことになる。
その場合、尹は5年の任期を通じて一本の主要法案も成立させられない公算が高まる。持論の教育、労働、年金、医療改革も、議会で葬られるのは必至だ。苦労してまとめたはずの党内は分裂し、日本との関係改善には各方面からの抵抗が強まるだろう。
党内の反対派を排除し、メディアを敵に回し、野党陣営には牙をむく。そういう尹の強引な手法には欠陥がある。そもそも与党の支持者を増やしにくい。
韓国ギャラップの4月初旬の調査では、政府を牽制するために来年の総選挙では野党候補が多数当選すべきとの回答が50%に達していた。もちろん、選挙までにはまだ1年あるので、何が起きるかは分からない。
たとえ国民全般には嫌われても、自分の支持基盤にアピールする政策ならどんどん進める。それが現時点までの尹のやり方だ。彼が韓国内の政治的分断を深めたとは言うまい。だが亀裂を埋める努力が見られないのも事実だ。
このままだと、彼の支持率は今後もせいぜい30%程度にとどまる。そして来年4月の総選挙までに与党の支持基盤を拡大できなければ、尹錫悦は大統領として何の遺産も残せないことになる。
From thediplomat.com