最新記事
韓国

人気を当てにしない「親日」尹大統領、1年目の成績表の中身とは?

Yoon’s Polarizing First Year

2023年5月15日(月)14時13分
カール・フリートホーフ(シカゴ国際問題評議会フェロー)
尹錫悦

次期総選挙までに支持率の立て直しが求められる尹 KIM YONG WIIーOFFICE OF THE PRESIDENT, ROK

<韓国政界では最大の汚点となる「親日」で国民和解の道を捨て、対日関係改善に走る尹錫悦大統領。死活的に重要な来年4月の総選挙で新自由主義的リーダーは勝てるのか>

韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が5月10日、就任1周年の節目を迎えた。しかし残念ながら、輝かしい初年度とは言えなかった。

最初のうちは失言やスキャンダル、不手際が相次ぎ、政治経験なしで初めての国政選挙に打って出て僅差で大統領に選ばれた未熟さばかりが目についた。当然、支持率は急降下し、彼の政権は四六時中が危機対応モードという感じだった。

それでも今年に入ってからは、どうにか針路が定まってきたように見える。ようやく学習効果が表れてきたということかもしれない。だが一方で、選挙戦で深まった国内の分断を乗り越え融和を目指すという当選直後の誓いは、あっさり捨てた。

そもそも、彼を担いだ人たちには分断を癒やそうという気がなかった。そして尹自身も、野党との協力は不可能と判断し、むしろ来年の総選挙に向けて支持基盤を固めることを優先しているようだ。

結果として、もはや尹は国民的な人気を当てにしない大統領になった。党内の支持基盤を固めた今は、韓国社会の深い分断を利用してでも自らの描く将来構想を進めればいいと考えているらしい。それで物議を醸すとしても、むしろ望むところというわけだ。

その将来構想は不鮮明だが、要は新自由主義的なもので、国内的には教育や労働、医療、年金の制度改革を掲げ、外交では対日関係の改善を主軸に据えている。

その一方で、尹は国内メディアに戦いを挑み、与党内の敵を排除し、野党を縛るために(かつては自分が率いていた)検察当局の権限を再び強化してきた。

不利な報道は排除する

まず、報道機関に対して強硬な姿勢で臨むようになったのは、昨年9月に訪米したとき、たまたま録音されてしまった失言が明るみに出てからのことだ。

ニューヨーク訪問中にジョー・バイデン米大統領と少し言葉を交わした後で、卑俗な言葉を口走ったような映像が報じられると、与党「国民の力」はその報道をした韓国の大手放送局MBC(韓国文化放送)の社長や記者らを検察に告発した。さらにその後、MBCの記者たちは尹の外遊時に大統領専用機に同乗することを禁じられた。

するとMBCを狙い撃ちしたという点に、米国務省が目くじらを立てた。同省の「人権報告書」でこの問題に言及し、MBC記者の排除を「暴力と嫌がらせ」に当たるとした(後に撤回)。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

マスク氏、政権ポストから近く退任も トランプ氏が側

ワールド

ロ・ウクライナ、エネ施設攻撃で相互非難 「米に停戦

ビジネス

テスラ世界販売、第1四半期13%減 マスク氏への反

ワールド

中国共産党政治局員2人の担務交換、「異例」と専門家
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中