エルドアンの政治生命に終止符は打たれるか──迫るトルコ大統領選、国際社会が目を光らせるべき2つのこと
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さらに今年1月には、公務員の賃金の30%引き上げも発表された。こうした大盤振る舞いはトルコ経済に打撃を与えるだろうが、エルドアンが気にするのは選挙日程のみ。支出拡大の悪影響の多くは、次期大統領の5年の任期中に表面化することだろう。
野党陣営は、得票数をめぐる駆け引きでAKPに勝たなければならないという難題にも直面している。
20年間にわたり政権を握ってきたエルドアンは、前例にない手法で国家統制を強化してきた。抑圧的な戦術を取ることを恐れず、目先の利益につながるのなら同盟を結ぶことも、破棄することもいとわない。エルドアンは常に、無慈悲で日和見的な指導者の姿をさらし続けてきた。
今回の選挙はエルドアンにとってかつてないほど大きな賭けであり、本人もそれを自覚している。
懸念されるのは、投票日の夜には野党が優勢(ただし僅差で)だが、エルドアンがYSKなどの力を使って票差を埋めようとするシナリオだ。これは14年のアンカラ市長選や17年の憲法改正の国民投票で使われた手法だとされる。19年のイスタンブール市長選でも同様の試みがなされたが、この時は失敗に終わった。
もう一つの危険は、野党が勝利してもエルドアンが敗北を認めないという異例の事態だ。第1回投票でどの候補者も50%以上の票を獲得できずに決選投票に突入した場合、このリスクが高まる(エルドアンとクルチダルオールが突出しているのは間違いないが、知名度の低い候補者に票が流れ、第1回投票で勝ちきれない可能性はある)。
第1回投票と決選投票の間隔が2週間しか空いていないため、歴史的な選挙を控えて既に緊迫しているトルコ国内の雰囲気が一段と過熱するかもしれない。
だとすれば、国際社会は多大な資源を投入して、現地での選挙違反行為を監視・記録する必要がある。違反があった場合には即座に公然と糾弾しなければならない。そしてエルドアンやAKPに対して、選挙結果への介入や抗議行動の武力鎮圧には、外交関係の変化や関係者への制裁などの代償が伴うと知らしめることも必要だ。
21年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件や昨年のブラジル大統領選後の暴動を経て、選挙結果を尊重し、政権移行を平和的に実現する重要性に改めて世界的な関心が高まっている。国際社会はトルコでこの2点が守られるよう目を光らせるべきだ。トルコの民主主義は今、存亡の危機に瀕しているのだから。
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