「聖界正義の剣」「鳩の王笏」...謎のアイテム続出の戴冠式、英国人にも意味不明だった
CROWN MADNESS
どれもこれも、ゲームで王家の一員を倒したら獲得できる必殺アイテムの名前のよう? イギリス人だって、そう思っている。おまけに、最初から最後まで大真面目なのだから救いようがない。戴冠式では誰も冗談を言わず、ほほ笑むこともなく、小さなビロードのクッションから「戴冠のスプーン」というものを厳かに取り上げて何かをする。
これが本当にイギリスなのか
この行事に一般市民も加わるよう告げられていなければ、ここまで珍妙には感じなかったかもしれない。だが戴冠式に先立つ声明は、当日の特定の瞬間になったらテレビの前で一緒に誓いを唱えるよう呼びかけていた。「国王陛下に、法に基づく陛下の相続人と後継者に、心からの忠誠を誓います」と。
英王室からは、戴冠式の昼食会のメインディッシュであるコロネーション・キッシュを作って戴冠式を祝いましょう、という「お達し」があった。タラゴンやチェダーチーズ、ホウレン草、ソラ豆を使った一品だ。
公式ではない関連商品や記念イベントも山ほどあった。イギリスの定番ピザレストランチェーンのピザ・エクスプレスは、3種類の肉を使用した特別メニュー「ザ・キング」を提供。ウーバーは戴冠式前の数日間、英王室の馬車を模した特別仕立ての「コロネーション・キャリッジ」に乗ってロンドン市内の公園を巡る馬車ツアーを実施した。
合計23キロ超のチョコレートでできた実物大のチャールズの半身像や、限定ビール「コロネーション・キングスエール」も登場した。ニンジンが王冠をかぶった謎の記念マスコットを発表したスーパーもある。
この手の感情は周期的に湧き起こる。エリザベス女王が死去したときも、ヘンリー王子やウィリアム皇太子の結婚式のときもそうだった。目を覚ましたら、クッキー缶に描かれたイラストの中にいたような感覚だ。これが私の国なのか? おそらく、そうなのだろう。
ただ、普段ならそんなことは無視していられる。イギリスの日常生活には、厳かさや仰々しさは全くない。それなのに突然、AIスピーカーのアレクサやプレイステーションのある自宅の居間で、何世紀も前に始まった古い儀式、神が1人の男性に国民を支配する権利を与えたことを認める儀式を目撃することになる。
だがあれこれ言っても、結局は大勢がチャールズの戴冠式を目にするはずだ。見たくて見るのかもしれないし、同じ部屋にいる誰かが見ている画面を(話によれば、アメリカ人が感謝祭パレードを視聴するときのように)別のことをしながらチラ見するだけかもしれない。
それでも、これだけは断っておこう。数多くのイギリス人が戴冠式に目を見張ったのは、そのばからしさにあきれたからだ。そう、世界各地の多くの人と同じように......。
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