最新記事
ウクライナ

バイデン、ATACMS長距離ミサイル供与の可能性に言及

Biden Leaves Door Open for Ukraine to Receive U.S. ATACM Missile Systems 

2023年5月31日(水)17時15分
ブレンダン・コール

ロシアからの連日のドローン攻撃で傷ついたキーウのビル。長距離ミサイルを求める声が強くなっている理由の1つでもある Pablo Petrov/Press service of the State Emergency Service of Ukraine/REUTERS 

<F16の供与に続き、ロシア領内まで届く長距離ミサイルATACMSも供与の動き。ロシアは>

【動画】ATACMSでウクライナは勝てるか?

ジョー・バイデン大統領は、ロシアの侵攻に対抗するためにウクライナが求めている米軍の長距離ミサイルシステムを、いずれウクライナに提供する可能性をほのめかした。

5月29日、ロシアがウクライナへの空爆を強化していることへの対応を記者から問われたバイデンは、ロシアの動きは「予想外ではない」と答え、「だからこそ、ウクライナに必要なものをすべて与え続けなければならない」と付け加えた。

続いて、スウェーデンのNATO加盟について何らかの動きがあるかと問われ、「来週」議論すると答えた。その後、ワシントンがウクライナに米国製地対地陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)の供与に合意する可能性について触れた。

ウクライナ内務省のアントン・ゲラシュチェンコ顧問はこのやりとりに関する動画をツイッターに投稿。そのなかで、バイデンはATACMSの供与について「それは今も検討中だ」と記者に答えている。

ウクライナのキラ・ルディク国会議員は、キーウに対する数日前の攻撃を含め、ロシアの攻撃が激しくなっていることから「われわれの要求に緊急性があることは明らかだ。長距離ミサイルをできるだけ早く手に入れる必要がある」とツイートした。

クリミアの奪還も可能になる

ATACMSは、ロッキード・マーチン社製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)から発射される長距離地対地ミサイルで、ウクライナは以前からアメリカに供与を求めている。

一方、米政府はロシアが始めた紛争をエスカレートさせることを恐れて、300キロ以上離れたロシア領内の標的を攻撃できるこのミサイルの提供を見送ってきた。

一部の米軍関係者は、ウクライナが必要とするすべての武器、特にロシアが2014年に占領したクリミアの奪還を可能にする長距離システムを提供するよう米政府に繰り返し求めているが、米欧州陸軍の元司令官ベン・ホッジスはその一人だ。

ホッジスは30日に本誌に対し、バイデン政権は「最終的に」ウクライナにATACMSを提供すると信じていると語った。「話があまりにも遅々として進まないと、この戦争を無用に長引かせることになるし、腹立たしい」

バイデン政権は長距離精密兵器の提供には「引き続き消極的」な姿勢を見せているが、それは「米政府が求める戦略的成果を明確に定義したくない、あるいはできないからだ」と述べた。

「おかげで、バイデンはなかなか決定を下すことができずにいる。それはロシアを利するだけだ。ロシアが核攻撃に踏み切ることを恐れて、バイデン政権が自粛していることをロシアが察知しているからだ」

試写会
『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、停戦巡る米提案に同意 「根源要因」排除

ワールド

米民主党主導州、トランプ政権の教育省廃止の停止求め

ワールド

EU産ワインに200%関税も、トランプ氏が対抗措置

ビジネス

米の年内利下げ、2回に予想引き上げ=バークレイズ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 10
    『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中