34件もの罪状を抱えた、トランプ訴追劇場の今後の行方は?
Trump Indicted in NY
ただしナショナル・エンクワイアラーの元親会社アメリカン・メディアが18年に司法省と訴追免除で合意し、口止め工作における同社の役割が「16年の大統領選投票日前に、女性が当該候補者に不利な主張を公表し、それによって選挙に影響を及ぼすことがないようにする」ことだったと認めている点は注目に値する。大陪審で証言した同社のペッカー元CEOは、公判でも重要な証人となるだろう。
だが有罪の評決を引き出すには、記録の不正な改ざんと、それが自身の選挙運動に役立つという認識(意図)の両方を証明する必要がある。その際に問題となるのはコーエン証言の信憑性だ。
またトランプ側は、コーエンから口止め料の支払いは合法だと聞き、自分はその助言に従ったまでだと反論してくるはずで、検察はこの主張を崩さねばならない。ここでも、問題は陪審員が2人の男のどちらを信用するかだ。
他の疑惑の解明を後押し
もちろん、ブラッグは陪審員の人選に一定の影響力を行使できる。検察側も被告側も、最大で10人までの陪審員候補を忌避できる。
検察側は、共和党支持者などトランプに好意的な陪審員を排除するために拒否権を行使する可能性が高い。一方で弁護側も、民主党寄りの陪審員を排除するために拒否権を使ってくるだろう。
しかし公判はマンハッタンで開かれるから、陪審員の候補者には圧倒的に民主党支持者が多いはずだ。つまり検察が全ての陪審員を民主党支持者で固めることは、弁護側が共和党支持者を集めるよりもずっと簡単だろう。
さて、運よく検察寄りの陪審員団ができ、有罪の評決を出したとして、その場合の量刑はどうなるか。各種の報道によれば、最高で禁錮4年のE級重罪となる。
ただし一般論として、ニューヨークの裁判官が暴力を伴わないE級重罪の初犯者に収監命令を出すとは考えにくい。被告が前大統領となれば、なおさらだ。仮に裁判官がトランプの身柄拘束を必要と判断しても、まずは自宅軟禁くらいだろう。
当然のことながら、この訴訟は困難でリスクが高い。今回の犯罪に訴追の前例がないからではない。現にトランプの会社の財務責任者だったアレン・ワイセルバーグは別件で、「搾取の意図」をもって業務記録を改ざんした罪で有罪になっている。