最新記事
中国警察

世界中に「秘密警察署」を張り巡らす中国の狙いは?

Secret Chinese Police Stations Are Legal in These Countries

2023年4月19日(水)18時24分
ニック・モルドワネック

中国公安の「手先」をしていた疑いで逮捕された米国市民、盧建旺(4月17日) Bing Guan-REUTERS

<以前から存在が指摘されていた中国の海外「秘密警察」に、遂にFBIの捜査のメスが入った。マンハッタンのチャイナタウンで中国公安の手先として、中国反体制派に脅迫や嫌がらせをしていた容疑だ。だがこれは、アメリカだけの問題ではない>

米当局は4月17日、ニューヨーク市で中国の「秘密警察署」を運営し、司法妨害を行なった疑いで、同市在住の男2人を逮捕した。これを受けて、世界中に埋め込まれた中国の「秘密警察署」に関心が集まっている。

4月17日にブルックリンの連邦裁判所で公開された刑事告訴状のなかで米司法省が述べたところによれば、盧建旺(Lu Jianwang)と陳金平(Chen Jinping)の両容疑者は、中国公安部当局者の「指揮と監督の下」で活動していたという。ふたりは、マンハッタンに秘密の出先機関を設け、アメリカにいる中国反体制派を脅迫し、中国政府に対する批判を封じて中国政府を支援していたとされている。

米政府高官は本誌に対し、「米国政府は、米国民やアメリカにいる人々を、国境をまたいだ抑圧や、その他外国からの有害な影響から守るために、利用可能なあらゆる手段をとると明言する」と話した。「中国政府が----あるいはいかなる外国政府でも----アメリカ人に嫌がらせをしたり脅したりするのを看過するつもりはない」

中国外務省の汪文斌(ワン・ウェンビン)副報道局長は4月18日の記者会見で、逮捕のニュースを重大な事態ととらえたうえで、中国は「米国による中傷と名誉棄損、政治工作、『国境をまたいだ抑圧』なる虚偽の主張、中国の法執行機関とサイバー当局に対する臆面もない告発に立ち向かう」と述べた。

中国と協力する警察も

スペインのマドリードを拠点とする非政府組織(NGO)「セーフガード・ディフェンダーズ」は2022年9月、中国警察が、国外にいる中国共産党関係者と協力して、各国に「警察業務拠点」を設けているとする報告書を公開した。とりわけ目立つのがヨーロッパで、スペインなどで9カ所の拠点が発見された。

この報告書をきっかけに、14カ国の政府が、そうした拠点の真偽をめぐる調査に乗り出した。

同NGOはこう述べる。「そうした拠点が行う仕事の大部分は、単に中国人の住民や観光客にサービスを提供することだが、ほかならぬ中国政府から得られた証拠によると、マドリードにある1拠点は中国警察と積極的に協力し、秘密かつ違法な監視活動に従事していた」

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾道ミサイル発射と米当局者 ウクライ

ワールド

南ア中銀、0.25%利下げ決定 世界経済厳しく見通

ワールド

米、ICCのイスラエル首相らへの逮捕状を「根本的に

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、11月はマイナス13.7
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中