フィリピン、米軍が利用可能な基地4カ所発表 中国対処シフトを鮮明に
比大統領府は「新たに追加された4カ所は戦略的に極めて重要だ」としている。比政府はEDCAに基づく基地などはあくまで米軍の使用が可能な場所であり、米軍が常に駐留する米軍基地ではないと強調。自然災害などの救援活動にも携わる場所であり、普段はフィリピン軍の物資集積所などとしての機能も有していると説明している。
一部州知事が反対表明
こうした政府の丁寧な説明の背景には、新たに追加された4カ所のうち海軍基地と民間空港が位置するルソン島北東部カガヤン州のマヌエル・マンバ知事が「米軍の使用」に反対を表明しているという事情がある。
マンバ知事は政府の公表以前の3月に「州内に追加される2カ所があると非公式に伝えられた」と一部報道機関に漏らしていた。
マンバ知事は有事などに米軍が基地や空港を使用して展開することになれば米中の対立に同州が巻き込まれる恐れがあり、州民の安全確保の観点から異議を唱えているのだ。
これに対しマルコス大統領は「反対している地方に対してはEDCAに基づく米軍による基地使用の重要性を説明していく」として、今後協議を通じて州政府や地元民の理解と支持を得ていく方針を明らかにしている。
マルコス大統領は1月に北京を訪問し、習近平主席との首脳会談に臨み、その席で南シナ海問題を提起し、習近平主席からは「友好的な協議を通じて解決したい」との言質を得た。
しかしその後も中国海警局船舶による南シナ海でフィリピンの排他的経済水域(EEZ)ヘの侵入やフィリピン沿岸警備隊艦艇へのレーザー照射事案など悪質な嫌がらせや妨害行動が続いており、フィリピンの対中世論は厳しさを増している。
いずれにしろ追加された4カ所が比米による中国対処の強化につながることは明白で中国側の猛反発が予想されている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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