フィリピン、米軍が利用可能な基地4カ所発表 中国対処シフトを鮮明に
フィリピン軍と米軍の合同演習でのハイマースの実弾射撃訓練 Eloisa Lopez - REUTERS
<台湾や南シナ海での有事に米軍の即応展開が可能に>
フィリピン政府は4月3日、米国との「米比防衛協力強化協定(EDCA)」に基づくフィリピン国内で米軍が新たに使用可能な基地など4カ所について詳細を明らかにした。
これは2月に米オースティン国防長官がフィリピンを訪問してカリート・ガルベス比国防相と会談した際に、これまで米軍が使用可能としてきた5カ所に加えて新たに4カ所増やし合計9カ所とすることで合意していたものの、詳細な場所などについてはこれまで明らかにされてこなかった。
新たに米軍がフィリピンでの演習などで展開する場合に使用が可能となるのは、北部ルソン島北東部のカガヤン州カミロ・オシアス海軍基地、民間のラルロ空港、カガヤン州の南に位置するイサベラ州にあるメルチョール・デラクルス陸軍駐屯地、そして南シナ海の南沙諸島に近い南西部パラワン州のバラバック島の4カ所となっている。
バラバック島はバラバック海峡を挟んでマレーシア・ボルネオ島から約50キロの位置にある。マレーシアも南シナ海での領有権問題を抱えており中国との間で権益争いを抱えているという同じ事情を抱えている。
2016年に比米間で合意に達した既存の5カ所は、中部ビサヤ地方のセブ州、南部ミンダナオ島北部にあるミサミス・オリエンタル州のカガヤン・デ・オロ、パラワン州、米軍のスービック海軍基地やクラーク空軍基地のあったルソン島中部のパンパンガ州、同じくルソン島中部のヌエべ・エシハ州の5カ所。そこに今回4カ所が新たに追加されたことになる。
台湾、南シナ海での有事に即応
今回追加された米軍が使用可能な基地などはそのうち3カ所が北部ルソン島の北東部に位置する。そしてルソン島の北方には台湾海峡を経て台湾がある。
このため追加されたルソン島の3基地は台湾有事を視野に入れたものとみられており、米政府が台湾有事にここから米軍を展開することが予想されている。
また南部パラワン州最南端部沖合の離島バラバック島は中国が一方的に海洋権益を主張してフィリピンと領有権争いを繰り返している南シナ海に面している。特に南沙諸島に近い位置にあることから南シナ海問題への米国のコミットメントを明確に示すシグナルを中国に送るものとなった。