国家転覆を狙う「加速主義者」の標的は「電力インフラ」──未解決事件が相次ぐアメリカ

PROTECTING THE GRID

2023年2月16日(木)15時45分
トム・オコナー(米国版シニアライター)、ナビード・ジャマリ(米国版記者)

230221p42_TRO_02.jpg

極左集団アンティファの集会に対抗して集まったオルト・ライト(新右翼)のメンバー(オレゴン州) KAREN DUCEY/GETTY IMAGES

企業情報セキュリティーに関するメモと、カリフォルニア州政府の機関「脅威評価センター」が昨年10月に発表した情報評価には、国内の過激派が電力インフラ攻撃の計画やノウハウを共有している事例や、全米各地で既に実行された攻撃の事例が詳述されている。

その大半に電力網という弱点を突いて国家を転覆しようとする「加速主義者」、つまり極右やネオナチが絡んでいる。

例えば3月にはオクラホマ州南部の「レッド川流域農村部電力連合」の施設が銃で破壊され、多数の世帯への送電が止まり、大規模な石油流出事故が起きた。この施設は80万~100万ドルもする変圧器を交換しなければならなかった。

7月にはカリフォルニア州ウォスコの変電所が銃撃に遭い、有害な化学物質が大量に流出。同月にはまたサウスダコタ州ヒューロン近郊のキーストーン・パイプラインに電力を供給する変圧器が破壊され、パイプラインの送油量が減った。

カリフォルニア州の脅威評価センターはこうした「特筆すべき事例」も含めた多くの事例について、犯人や動機は不明だが国内の過激派の関与が疑われると述べている。

最近起きた攻撃はおおむね小規模なものだが、全米に広がる電力網には送電線や変圧器その他の重要なポイントが多数あり、その大半はテロ攻撃に無防備なため、国内のテロ組織は簡単に大規模停電を起こせると専門家は指摘している。

限定的な攻撃であっても、テレグラムや4chanなどの極右チャンネルでネオナチが「大勝利」と騒ぎ立てるため、それをまねて、さらに大きな被害を出そうとする者が後を絶たない。

実際、過激派の活動を追跡するコンサルタントグループなどが最近まとめた報告書によると、極右系のソーシャルメディアではより大規模な攻撃のより頻繁な実行を呼びかける投稿が目立って増えているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国CPI、2月は0.7%下落 昨年1月以来のマイ

ワールド

米下院共和党がつなぎ予算案発表 11日採決へ

ビジネス

米FRBは金利政策に慎重であるべき=デイリーSF連

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 7
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 8
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中