比マルコス大統領が中国大使召還 艦船へのレーザー照射問題で親中路線転換へ
比EEZ内でレーザー照射
レーザー照射は2月6日に行われた。フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にある「シエラマドレ」というフィリピン海軍の座礁艦に比軍兵士が駐留しており、ここへ食料や生活物資を補給しようと向かっていた沿岸警備隊の艦艇「マラバスクア」に対し、中国海警局船舶「5205」が約7,4キロ離れた位置から行ったものだ。
「5205」はその後も「マラバスクア」の右舷後方約130メートルに接近して危険な航行を繰り返して妨害。「マラバスクア」は進路変更を余儀なくされアユンギン礁から離れたという。
比は今後米国との関係強化で対応へ
比外務省は重ねて「中国海警局船舶の行動はフィリピンの主権と安全保障に対する重大な脅威であり、我が国は自国のEEZ内で合法的に活動する権利を有する」と表明して中国のレーザー照射を改めて批判した。
外務省による中国政府への批判に加えて、マルコス大統領自身が中国大使を召還してまで遺憾の意を直接伝えた背景には、中国に対するフィリピン社会や国民の強い反発があり、比政府とマルコス大統領が世論の動向を重視していることがあるのは間違いないとみられている。
今後南シナ海での緊張がさらに高まる可能性もあり、マルコス大統領としてはレーザー照射問題でフィリピンの立場を支持することを表明していた米政府との関係強化を進めながら厳しい対応を続けることになりそうだ。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など