「妻と不倫した部下を射殺」疑惑の警察幹部に厳罰 インドネシア、警察の威信失墜と死刑判決
南ジャカルタ地方裁判所に出廷したフェルディ・サンボ被告(左)と妻のプトリ被告 KOMPASTV / YouTube
<事件や犯罪への関与、汚職疑惑が絶えない警察の改革は進むか──>
インドネシアの首都ジャカルタにある南ジャカルタ地方裁判所は2月13日、殺人罪と犯行隠蔽工作などの容疑に問われていた警察少将で職務治安局長という要職にあったフェルディ・サンボ被告に対して死刑判決を言い渡した。
検察側は終身刑を求刑していたが、裁判官は国家警察の威信を喪失させた事件の重大性や少将が自ら部下の警察官を射殺したこと、銃撃戦を装ったり監視カメラを操作するなど証拠隠滅を進め、警察幹部の立場を利用して部下数十人にも隠蔽工作や法廷での虚偽証言などを行わせた重大性などから極刑が選択された。
この事件はインドネシア国内では2022年7月8日の事件発生直後から大きな関心を呼び、ジョコ・ウィドド大統領が真相解明と犯人逮捕を国家警察に直接指示するなど社会全体を巻き込んだ大ニュースとなっていた。
妻への暴行が原因と主張
事件発生当時、南ジャカルタにあるサンボ容疑者の公邸で部下のヨシュア・フタバラット曹長(27)が容疑者の妻に暴行。これを見とがめた同じく部下のリチャード・エリエゼール2等巡査とフタバラット曹長との間で口論が起こり、銃撃戦となってフタバラット曹長が射殺され、事件後連絡を受けたサンボ容疑者が公邸に駆け付けたことになっていた。
ところが警察が大統領からの直接指示もあったため慎重に捜査を進めた結果、それまでの証言はすべて虚偽で、リチャード巡査がサンボ被告に命じられてフタバラット曹長を銃撃。とどめを刺すためにサンボ被告は最後に同曹長の頭部を撃ち、周囲の壁にも銃弾を撃ち込んであたかも銃撃戦があったかのようなカモフラージュを主導的に行い、公邸周辺の監視カメラの映像消去などの証拠隠滅も部下に命じたことが明らかになった。
また同じく殺人ほう助や虚偽証言などで逮捕されて公判中のサンボ容疑者の妻プトリ被告と殺害されたフタバラット曹長との間には不倫関係があったことも判明した。
プトリ被告は禁固8年が求刑されているほか、殺害実行犯の一人であるリチャード被告は捜査の過程で「司法取引」に応じてすべて真実を証言したものの禁固12年を求刑され、他の関係者でサンボ被告から当初フタバラット曹長殺害を指示されたものの断った部下など2人には禁固8年が求刑されている。