最新記事

スキャンダル

「妻と不倫した部下を射殺」疑惑の警察幹部に厳罰 インドネシア、警察の威信失墜と死刑判決

2023年2月14日(火)19時30分
大塚智彦
出廷したフェルディ・サンボ被告(左)と妻のプトリ被告

南ジャカルタ地方裁判所に出廷したフェルディ・サンボ被告(左)と妻のプトリ被告 KOMPASTV / YouTube

<事件や犯罪への関与、汚職疑惑が絶えない警察の改革は進むか──>

インドネシアの首都ジャカルタにある南ジャカルタ地方裁判所は2月13日、殺人罪と犯行隠蔽工作などの容疑に問われていた警察少将で職務治安局長という要職にあったフェルディ・サンボ被告に対して死刑判決を言い渡した。

検察側は終身刑を求刑していたが、裁判官は国家警察の威信を喪失させた事件の重大性や少将が自ら部下の警察官を射殺したこと、銃撃戦を装ったり監視カメラを操作するなど証拠隠滅を進め、警察幹部の立場を利用して部下数十人にも隠蔽工作や法廷での虚偽証言などを行わせた重大性などから極刑が選択された。

この事件はインドネシア国内では2022年7月8日の事件発生直後から大きな関心を呼び、ジョコ・ウィドド大統領が真相解明と犯人逮捕を国家警察に直接指示するなど社会全体を巻き込んだ大ニュースとなっていた。

妻への暴行が原因と主張

事件発生当時、南ジャカルタにあるサンボ容疑者の公邸で部下のヨシュア・フタバラット曹長(27)が容疑者の妻に暴行。これを見とがめた同じく部下のリチャード・エリエゼール2等巡査とフタバラット曹長との間で口論が起こり、銃撃戦となってフタバラット曹長が射殺され、事件後連絡を受けたサンボ容疑者が公邸に駆け付けたことになっていた。

ところが警察が大統領からの直接指示もあったため慎重に捜査を進めた結果、それまでの証言はすべて虚偽で、リチャード巡査がサンボ被告に命じられてフタバラット曹長を銃撃。とどめを刺すためにサンボ被告は最後に同曹長の頭部を撃ち、周囲の壁にも銃弾を撃ち込んであたかも銃撃戦があったかのようなカモフラージュを主導的に行い、公邸周辺の監視カメラの映像消去などの証拠隠滅も部下に命じたことが明らかになった。

また同じく殺人ほう助や虚偽証言などで逮捕されて公判中のサンボ容疑者の妻プトリ被告と殺害されたフタバラット曹長との間には不倫関係があったことも判明した。

プトリ被告は禁固8年が求刑されているほか、殺害実行犯の一人であるリチャード被告は捜査の過程で「司法取引」に応じてすべて真実を証言したものの禁固12年を求刑され、他の関係者でサンボ被告から当初フタバラット曹長殺害を指示されたものの断った部下など2人には禁固8年が求刑されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中