「ロシアは勝てないが、ウクライナも勝てない」──「粘り勝ち」狙いのプーチンと戦争が終わらない理由とは?
Slim Chances for Peace
しかし和平の条件をあまり高く設定すると、裏目に出る恐れがあると、ロシア専門家のニコライ・ペトロフは警告する。「ロシアはこの戦争に勝てないが、おそらくウクライナも勝てないだろう」
勝者なき状況ではロシア軍の完全撤退は「非現実的」な要求だと、ペトロフは言う。
プーチンの描く勝ち筋
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はウクライナの10項目の提案を「ただの幻想」だと一笑に付した。ロシアは今も侵攻時に掲げた戦争目的を撤回する気配を見せておらず、ゼレンスキー政権打倒も含め全ての目的を完遂する構えだ。
プーチンは持久戦に持ち込んで「我慢比べ」をするつもりだと、ペトロフは言う。「今はロシアもウクライナも(春の)大攻勢に向けて準備を進め、双方とも今より支配地域を広げるつもりでいる」
そのため現段階ではどんな形にせよ交渉が始まることは期待できない、というのだ。
プーチンが譲歩することはどう考えてもあり得ないと、ペトロフは断言する。「プーチンはウクライナが劣勢に追い込まれ防衛能力を失うまで辛抱強く待つ気でいる。持久戦になればロシアにはるかに勝ち目があるとみているのだ。その見方には一理ある」
粘りに粘ってずるずる戦争を続ければ、ウクライナと西側は精根尽きて、ロシアは「まずまずの勝利」を挙げられる。それがプーチンの狙いだと、ペトロフはみている。
もっとも、今のところウクライナを支援する西側諸国に「支援疲れ」が広がる兆しはない。アメリカなどで極右のノイジー・マイノリティー(声高な少数派)が終わりの見えないウクライナ支援に不満を唱えているだけだ。
プーチンは西側の一部に見られるこうした不満が組織化され、支援つぶしの一大勢力になることを期待していると、ペトロフは言う。「大規模な支援をしているのに一向に状況が好転しなければ、世論は支援を続けることに意味があるのかと騒ぎ出すだろう」
プーチンが失墜すればどうなるか。たとえトップの首がすげ替わっても、いきなり方針が変わることはまずないと、元米NATO大使のダールダーは予想する。