「ロシアは勝てないが、ウクライナも勝てない」──「粘り勝ち」狙いのプーチンと戦争が終わらない理由とは?
Slim Chances for Peace
彼によれば、プーチンの命運は作戦の成功に懸かっている。
「失敗したらロシアはおしまいで、プーチンもおしまいだ。もしもプーチンが失敗したら、後を継ぐのはさらに強硬な連中だろう。(クレムリンには)ハト派はいない......いたら投獄されている」
昨年12月にゼレンスキーはワシントンを訪問。ジョー・バイデン米大統領は、2人は戦争の終結について「全く同じビジョンを共有している」と語り、2014年以降にロシアに占領された全ての領土を奪還するというゼレンスキー政権の目標を支持していることを示唆した。
ゼレンスキーの訪米を受けてロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、「ワシントンの会談で、ウクライナもアメリカも平和を求めていないことが分かった」と批判した。「彼らは戦闘を継続することだけを考えている」
米政府関係者は、ウクライナとロシアの交渉の再開はほとんど期待していない。一方で、アメリカがウクライナの要求を軟化させようとしている節もある。マーク・ミリー米統合参謀本部議長は11月に、14年にロシアに併合されたクリミア半島を、ウクライナ軍が近く解放できる見込みは「高くない」と述べている。
アメリカはウクライナの限界を認識する必要があると、ダールダーは言う。「ウクライナが勝つ可能性は低い。現実としてロシア軍はかなり深く食い込んでおり、少なくともウクライナ軍がハルキウ(ハリコフ)やヘルソンで行ったような戦略的な方法で彼らを追い払うことは、非常に難しいだろう」
開かれた扉のジレンマ
NATOとEUの指導部は、ウクライナが定義するウクライナの勝利を、引き続き支持することを明確にしている。イエンス・ストルテンベルグNATO事務総長とウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長は1月10日に共同の記者会見で、加盟国にウクライナへの武器供与を継続するように促した。
ただし、NATOとEUへの加盟というウクライナの究極の野望は、より複雑な状況に直面している。ゼレンスキーは加盟について「迅速な手続き」を求めたが、加盟諸国から非現実的だとして退けられた。ウクライナが欧州大西洋圏の仲間入りを果たすまでには、公には温かい言葉を投げかけられているが、長い道のりが待ち受けている。