「ロシアは勝てないが、ウクライナも勝てない」──「粘り勝ち」狙いのプーチンと戦争が終わらない理由とは?
Slim Chances for Peace
NATOとEUの加盟を目指す方針はウクライナの憲法に明記されている。昨年6月にはEUの加盟候補国として承認され、9月末にNATO加盟を正式に申請した。
1月中旬に発表された新欧州センターの世論調査では、ウクライナ人の69%が自分たちのNATO加盟を排除するような和平交渉は考えられないと答えている。NATOは加盟を望む国への「開かれた扉」政策を断固として守り、ウクライナを排除しろというロシアの要求を拒否している。
一方、EUの主要国はロシアとの対話にも扉を開き続けるとしており、ウクライナをいら立たせている。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツのオーラフ・ショルツ首相はその先頭に立ち、ヨーロッパの大国が和平の名の下に、ウクライナに代償の高い譲歩を強いるのではないかという懸念を生んでいる。ただし、両首脳はここ数カ月、ウクライナへの軍事支援を大幅に拡大している。
NATOにとって、ウクライナの加盟は頭の痛い問題だ。ハンガリーとウクライナのような厄介な2国関係や、NATOが将来、ロシアとの対立に引きずり込まれるのではないかという懸念から、加盟30カ国が全て積極的に賛成することはないだろう。
ウクライナ大統領府は昨年9月、アナス・フォー・ラスムセン前NATO事務総長ら専門家と取りまとめた「キーウ安全保障協定」を提唱した。
これはNATO加盟までの防衛力強化として、欧米やカナダ、トルコ、オーストラリアなどと法的拘束力のある条約を結ぶというものだ。ウクライナをNATOの武器で武装したハリネズミに変えて、今後ロシアが侵略してきた場合はさらなる武器供与と懲罰的制裁が行われることになる。
安全保障協定の提案は、NATO加盟国の人命を危険にさらすことなく、ウクライナの長期的な安全を確保するための枠組みを示しているかもしれない。これが加盟への進入路になる可能性もある。
NATO諸国が戦車や装甲車、防空システムの供与を新たに約束したことは、ウクライナにとって心強く、西側の結束がプーチンやその同盟国が期待したようには弱まっていないという証しでもある。
「新たな武器の供与について発表があったということは、西側はプーチンの野望に終止符を打たなければならないことを理解したと言える」と、ウクライナ内務省顧問のゲラシュチェンコはみる。