最新記事

ウクライナ情勢

「ロシアは勝てないが、ウクライナも勝てない」──「粘り勝ち」狙いのプーチンと戦争が終わらない理由とは?

Slim Chances for Peace

2023年2月1日(水)12時30分
デービッド・ブレナン(本誌米国版外交担当)

NATOとEUの加盟を目指す方針はウクライナの憲法に明記されている。昨年6月にはEUの加盟候補国として承認され、9月末にNATO加盟を正式に申請した。

1月中旬に発表された新欧州センターの世論調査では、ウクライナ人の69%が自分たちのNATO加盟を排除するような和平交渉は考えられないと答えている。NATOは加盟を望む国への「開かれた扉」政策を断固として守り、ウクライナを排除しろというロシアの要求を拒否している。

一方、EUの主要国はロシアとの対話にも扉を開き続けるとしており、ウクライナをいら立たせている。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツのオーラフ・ショルツ首相はその先頭に立ち、ヨーロッパの大国が和平の名の下に、ウクライナに代償の高い譲歩を強いるのではないかという懸念を生んでいる。ただし、両首脳はここ数カ月、ウクライナへの軍事支援を大幅に拡大している。

NATOにとって、ウクライナの加盟は頭の痛い問題だ。ハンガリーとウクライナのような厄介な2国関係や、NATOが将来、ロシアとの対立に引きずり込まれるのではないかという懸念から、加盟30カ国が全て積極的に賛成することはないだろう。

ウクライナ大統領府は昨年9月、アナス・フォー・ラスムセン前NATO事務総長ら専門家と取りまとめた「キーウ安全保障協定」を提唱した。

これはNATO加盟までの防衛力強化として、欧米やカナダ、トルコ、オーストラリアなどと法的拘束力のある条約を結ぶというものだ。ウクライナをNATOの武器で武装したハリネズミに変えて、今後ロシアが侵略してきた場合はさらなる武器供与と懲罰的制裁が行われることになる。

安全保障協定の提案は、NATO加盟国の人命を危険にさらすことなく、ウクライナの長期的な安全を確保するための枠組みを示しているかもしれない。これが加盟への進入路になる可能性もある。

NATO諸国が戦車や装甲車、防空システムの供与を新たに約束したことは、ウクライナにとって心強く、西側の結束がプーチンやその同盟国が期待したようには弱まっていないという証しでもある。

「新たな武器の供与について発表があったということは、西側はプーチンの野望に終止符を打たなければならないことを理解したと言える」と、ウクライナ内務省顧問のゲラシュチェンコはみる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米農場の移民労働者、トランプ氏が滞在容認

ビジネス

中国、太陽光発電業界の低価格競争を抑制へ 旧式生産

ワールド

原油先物は横ばい、米雇用統計受け 関税巡り不透明感

ワールド

戦闘機パイロットの死、兵器供与の必要性示す=ウクラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中