「ロシアは勝てないが、ウクライナも勝てない」──「粘り勝ち」狙いのプーチンと戦争が終わらない理由とは?
Slim Chances for Peace
訪れない平和を待つな
ウクライナ政府関係者は、14年にロシアが侵攻して以降の東部のように停戦後も緊張状態が続く「凍結された紛争」は、受け入れ難いリスクだと警告する。「戦争が長引くことはウクライナ経済だけでなく、ヨーロッパや世界の経済にとってもグローバルな脅威となる」と、ゲラシュチェンコは言う。
西側は決して訪れない平和を待ってはならないと、ダールダーは言う。「ほとんどの戦争は、勝利や平和で終わるのではない。戦争は断続的に続く。だからこそウクライナの欧州大西洋圏への統合が優先されるべきだ」
NATOは無条件でウクライナを加盟させるのではなく、腐敗の撲滅や民主主義と法の支配の強化などの改革を求めるだろうと、ダールダーは言う。それでも(加盟申請中の)フィンランドとスウェーデンを除いて、申請時に現在のウクライナほど準備が整っていた加盟国はないという。
「ロシアが核保有国であるという現実と、ウクライナ支援とロシアとの対立激化を避けたいというバランス取りが、足かせになっている。そのバランスは常に変わり、NATOをめぐる議論に影響を与えている。だから誰も話したがらない。でも遅かれ早かれ議論しなければならないのだから、今、始めるべきだ」