賃金の男女格差は都道府県によってこんなに違う
賃金の男女格差は自治体、企業などの細かいレベルでチェックして改善しなければならない stefanovsky/iStock.
<全国の13の県では、年収の男女格差を示すジニ係数が「常軌を逸する」レベルにある>
男女共同参画の取組が盛んだが、日本はあらゆる面で性別による(不当な)格差が大きい国だ。たとえば賃金で、日本のフルタイム就業者の年収の性差は、データがあるOECD加盟国の中で最も大きい(拙稿「日本の男女の収入格差は、先進国でダントツのトップ」)。
女性は結婚したら稼ぎにくくなるので、結婚相手の男性に高い収入を求めざるを得ない。だがこのご時世、男性の給与も減っているので、希望に沿う相手は見つかりにくい。その結果、未婚化・少子化が進行する。大っぴらに言われることはないが、こういう現実があることも否めない。結婚した夫婦にしても、夫の収入への依存度が高いと虐待やDVのような問題も起きやすくなる。
賃金の男女格差を是正し、二馬力で安定した収入を得られるようにするとともに、ライフステージに応じて、柔軟に役割変更できるようにすることも望まれる。国や自治体は賃金の性差を絶えず「見える化」し、状況の改善に努める責務を有する。やや古いが、2017年の官庁統計で正社員男女の年収分布をとると<表1>のようになる。
働き盛りの正社員(男性1758万人、女性816万人)を、11の年収階層に分けた結果だ。真ん中の相対度数を見ると、男性と女性では分布はかなり違っている。年収600万円以上は男性では30%だが、女性では9%しかいない。その代わり、女性では年収300万円未満が43%を占める。
中央値は男性が476万円で、女性は330万円。働き盛りの正社員でこの数字は驚きだが、女性は自活ができるのかと危ぶまれるほど低い。年収の性差はこの中央値を比べれば分かるが、中央値(median)はちょうど真ん中の値というだけで、他の分布の特性は見えなくなってしまう。
年収の分布全体がどれほどズレているかは、<表1>の右端の累積相対度数をグラフにすることで可視化される。<図1>は横軸に女性、縦軸に男性の累積相対度数を取った座標上に、11の年収階層(G1~G11)のドットを配置し線でつないだものだ。この曲線をローレンツ曲線という。
この曲線の底が深いほど横軸と縦軸、すなわち男女の年収分布のズレが大きいことになる。対角線と曲線で囲まれた部分の面積(色付き)を2倍した値がジニ係数で、ズレが最も大きい場合、色付きの部分の面積は0.5(正方形の半分)となるから、ジニ係数はこれを2倍して1.0となる。逆に完全平等の場合、対角線と曲線は重なるのでジニ係数は0.0となる。現実の不平等の度合いは、この両端の間のどこかに位置する。
<図1>の色付き部分の面積は0.2105なので、ジニ係数はこれを2倍して0.4209となる。正社員男女の年収格差の数値化だ。ジニ係数は0.4を超えると常軌を逸して高いと判断されるので、日本の正社員の年収の性差は許容できる範囲を超えて大きい、ということになる。