ドミニク・チェンが語る、2050年のSNS・コミュニケーション・自律分散
THE BEST WAY IS TO INVENT IT
――どんな解決策があり得るでしょうか?
プラットフォームの問題は、ビジネスモデルの在り方やジェロントクラシー化する社会構造という人間の側の問題が、テクノロジーによって助長されているにすぎないとも言えます。だとしたら、そうならないように物事を進めるプロセス自体をテクノロジーで進化させることが重要です。
特定の管理者がいない分散型の次世代ウェブを表すweb3や、DAO(自律分散型組織)周辺の技術の考え方は、その一部であるブロックチェーン技術を使ったビットコインなどが投機的に動いているので、一見、希望を見いだしづらい現状があります。だけどそうした技術に適切な規制を設けて、社会的な意義のある運動などに実装していければ、今までにない組織の在り方をつくる可能性は失われていないと思います。
――web3的、自律分散的な考えで既に実践されているものはありますか?
web3そのものではないですが、ここで想起するのは、台湾で議会を占拠した「太陽花(ヒマワリ)革命」の学生たちから生まれたITで社会課題の解決を目指すコミュニティーのg0v(ガブゼロ)で、政府との緊張感のある対話を通じて政策にも影響を与えています。一番有名なメンバーのオードリー・タンは政府に閣僚として入りました。
日本でもアメリカ発の運動に影響を受けたコード・フォー・ジャパン(CFJ)で似たような試みが見られます。CFJはスペイン発の市民政治参加型デジタルプラットフォームDecidim(デシディム)を日本で展開しています。デシディムは誰でも利用や開発を行えるオープンソース方式で開発されていて、すでに加古川市や横浜市が導入して若い世代などからさまざまな提案を吸い上げて政策に生かしています。
また2004年の中越地震以降、過疎化が進んだ新潟県長岡市の旧山古志村(人口約800人)ではDAOをつくっています。山古志地域が発行するNFT(非代替性トークン)の電子住民票を村外の約1000人が購入して「デジタル村民」となり、その予算で住民と一緒に振興策を考え、投票しています。
これらはみなデジタルテクノロジーを使って不特定多数の人々がコミュニケーションを取りながら合意を形成していく、ガバナンスの新しいやり方といえるでしょう。
ここからSF的な発想で飛躍させると、例えば日本中の地方自治体が市町村レベルに至るまでDAOで運営され、住民が自分たちの街の在り方について非同期・オンラインでいつでも話し合いができる、というようなことが考えられるかもしれません。