最新記事

日本

ドミニク・チェンが語る、2050年のSNS・コミュニケーション・自律分散

THE BEST WAY IS TO INVENT IT

2023年2月15日(水)16時48分
ドミニク・チェン(情報学研究者)
ドミニク・チェン、DAO、自律分散、山古志、棚田、SNS

テクノロジーが日本各地で地方自治の概念を変えつつある(山古志地域の棚田) AFLO

<良き未来を阻む「老人支配」や「アテンション・エコノミー」から脱する自律分散的な在り方への試みは、既に日本各地で芽吹いている>

※本記事はニューズウィーク日本版2023年2月7日号「日本のヤバい未来 2050」特集に掲載された記事の拡大版です。

日本においてSNSなどネットを中心としたコミュニケーションが進むべき方向とは? また、その障害や希望となり得るテクノロジーとはなにか。エンジニア・起業家・情報学者として横断的な活動を展開しつつ、一児の父として日本の行く末も案じるドミニク・チェン氏に本誌・澤田知洋が聞いた。

◇ ◇ ◇


――2050年の日本におけるポジティブ・幸福な社会像とはどんなものでしょうか?

ウェルビーイングという概念が研究されています。身体的・精神的・社会的に充足している状態という意味で、人類共通のウェルビーイングも調べられてきましたが、近年では国・地域ごとの差異を認識することの大事さが指摘されています。例えば日本を含む東アジアに共通する文化的価値観では、欧米的な個人主義はそのままではなじまず、他者との関係性をどう充足させるかがより重要だということが研究で分かってきました。

ウェルビーイングな2050年の日本社会を目指す上で、考えるべきことのひとつには、社会的なコミュニケーションや合意形成をどう改善するかという問題が挙げられると思います。その中には、これまでは人々の注意を収奪することで収益を最大化するように設計されてきたSNSをどうデザインし直せるかという課題も含まれています。

――そのための最大の障壁は何でしょうか?

少子高齢化の問題は既に顕在化していて、政治・経済レベルでもいわゆる「ジェロントクラシー」をどう解きほぐすかという点が喫緊の課題であるように思います。ジェロントクラシーとは日本語では「老人支配」と訳される用語で、もともとは高齢の政治家が支配を行うことを指すものですが、現在の日本においては高齢の有権者が政治を決定しているという意味で解釈するべき言葉だと思います。

日本の政治の動きを見ていると、若年層と高齢者層の間で格差が広がり、良い関係性が築けていないように思います。日本の若者世代は自己肯定感が痩せ細っていて、厚生労働省によると10代後半の死因の1位は自殺です。内閣府の調査で自分は役に立たないと強く感じるかという質問に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と合計で約5割が答えています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 8
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中