東部のロシア軍精鋭部隊は戦闘不能、主力戦車も1年で半分喪失、このままではロシア大攻勢は不発に終わる?(英米専門家)
Elite Russian Brigades 'Combat Ineffective' After Heavy Losses: U.K.
ウクライナ軍に破壊されたロシアの主力戦車T-72B Kacper Pempel-REUTERS
<このままではウクライナ東部の大攻勢は不発に終わる。支配地域を広げるためには徴兵による大規模動員が必要だ>
ロシア軍は、ウクライナ東部で多くの人員を喪失しており、これが同地域で一気に攻勢をかけたいロシア軍の作戦に影響が出始めていると、複数のイギリス国防省幹部が語った。
イギリス国防省(MOD)は日次報告で、ロシア側に多くの死傷者が発生していると指摘。特にドネツク州のバフムトやウフレダールでこの傾向が強く、「『精鋭』とされる第155および第40海軍歩兵部隊が非常に多くの人員を喪失し」これにより「戦闘不能に陥っている可能性が高い」と指摘している。
イギリス国防省は2月20日、ロシア軍は、ウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナへの侵攻が始まってから1年となる2023年2月24日の節目に合わせて戦果を誇示する政治的な圧力に直面している、とも指摘した。
「ロシアは、開戦から1年目の節目に合わせて、バフムトを掌握したと主張する可能性が高い。ただしこれは、戦場での現状を無視した宣言になる」と、イギリス国防省の高官は語り、この春の大規模作戦で巻き返しができなければ、「ロシア上層部内部の緊張が増すだろう」と指摘した。
イギリス国防省とは別の西側の分析でも、ロシア軍は装備の更新に問題を抱えており、ルハンスク州における冬季の攻撃作戦でも、優勢を得るためのリソースに欠けているとみられるとの見解が示された。
主力戦車の半分を喪失
アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)は2月19日、ロシアは「膨大な数の」戦車を喪失しており、失った戦車の規模は16連隊に相当するとの見解を示した。それによれば、侵攻以降の1年間で、主力戦車のT-23BとT-72NB3Mのうちざっと1000両を破壊され、500両を奪われたという。使える戦車はあまり残っていないのではないか、とISWは見る。
ロシア軍が、再構成された機械化部隊を予備軍として保有しているのはほぼ確実だが戦力は限定的で、ルハンスク州の「現在の情勢を大きく変えることはできないとみられる」と、ISWのレポートは述べる。
ロシア軍が「一時的に」勢いを増す可能性はあるが、その場合でも「目標に遠く及ばないところで、攻撃の限界点に達する可能性が高く、戦場で大幅に進軍するには至らないとみられる」と、ISWは付け加えた。
アメリカの軍事関連シンクタンク、海軍分析センター(CNA)でロシア研究ディレクターを務めるマイケル・コフマンは2月18日、出演したポッドキャスト「ウォー・オン・ザ・ロックス」で、ロシア軍の新たな攻勢は、ウフレダールへの攻撃を皮切りに3週間前に始まっていたと指摘。ドネツクおよびルハンスクの2州では、5つ前後の前進軸が設けられていると指摘した。