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ロシアで服役中の米国人が送る拷問の日々...家族が語るウクライナ戦争後の変化と不安

My Twin in a Russian Prison

2023年1月26日(木)18時01分
デービッド・ウィーラン(専門図書館司書)

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息子の帰還を待ち続ける両親 COURTESY OF THE WHELAN FAMILY

双子の私には、メディアに出てポールの状況をアメリカ国民に伝え、政府に責任ある対応を求めるという役割がある。姉のエリザベスはプロの肖像画家として働く一方、ポールの件で政府とのパイプ役を引き受けている。

グライナーが釈放されて以来、エリザベスは連日のようにホワイトハウスの職員と接触している。国務省の人にも話を聞くし、連邦議会議員のスタッフに電話して情報を共有することもある。私たちはじっとしていられない。ポールが釈放され、祖国へ帰って来るまでは。

バイデン政権になって釈放に向けた動きが始まった

つい最近まで、つまりトランプ政権時代のホワイトハウスは沈黙を守っていた。今のバイデン政権はポールの釈放に向けて動き出したが、正直なところ、ポールが再び自由の身になるにはまだ何カ月も、何年もかかるだろう。

それでも私たちには、自国の政府が動き出したという確かな感触がある。それだけでも幸せだ。世界のどこかで、今も身柄を不当に拘束されているアメリカ人はたくさんいる。残された家族はつらい。だが黙っていたら、希望のかけらも見えてこない。

だから私たちは沈黙を破った。ポールに代わって声を上げる必要があるし、アメリカ政府かロシア政府に責任を取らせる必要があるからだ。

アメリカ政府がポールの釈放に向けて重い腰を上げるまでには、ずいぶん時間がかかった。この間、私たちは愛する家族を取り戻すため、文字どおり粉骨砕身でやってきた。でも政府が動き出した以上、あとは待つしかない。この先は「捕虜交換」の政府間交渉だ。相手側の事情も考慮しなければならない。

できるだけのことはしてきた。この先、私たちの力が及ばないことにまで首を突っ込もうとは思わない。でも、できることは続ける。

まずは、ポールが刑務所でテレホンカードを買って家族に電話できるよう、常に手元に現金がある状態にすること。現金は、粗末な食事(ポールの説明では1日の食事は約5センチほどの魚肉だけ)を補うために、彼が収容所内の売店で買い物をするにも必要だ。

食べ物や医薬品について彼から具体的な依頼があればアメリカやイギリス、カナダやアイルランドの大使館に取り次いで、それらが確実に彼の手元に届くように手配している(それでも時には、大切な物資が途中で看守に盗まれてしまうことがある)。

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