【英王室】2人が「うっとうしいカップル」であることをまずは認めるべき
The “H” and “M” Problem
だが夫妻がこれまでの激動の約5年間を、またも公の場で焼き直して語る姿を見ているうちに気付いた。この2人が与える不快感を認めることこそ、彼らの社会での役割を受け止めつつ、夫妻を本当に支持し続けるカギになるのではないか。
とりわけ英メディアによる露骨で人種差別的・女性差別的なメーガンいじめに、筆者は心を痛めてきた。2019年には英BBCの番組司会者が、誕生したばかりの夫妻の長男アーチーをチンパンジーに例えるツイートをして降板させられたこともある。
タブロイドはメーガンのあらゆる面を攻撃して、意識高い系で気難しく、わがままで人を操る女という人物像をつくり上げてきた。
メーガン支持派の筆者でも、こうした「ネガティブキャンペーン」に見方を左右されかねないのは承知している。それもあって、メーガンに少しうんざりする場面があってもこれまでは無視してきた。
だが自分たちをテーマに、自分たちの制作会社が手掛けたドキュメンタリーの中でもイラつく人物に見えるなら、それが実像かもしれない。いいかげん、そう考えていいはずだ。
『ハリー&メーガン』での夫妻は時に見当違いで自己陶酔的で、甘ったるい家族向け映画より陳腐に見える。2人は多くの場面で、自らの特権を可視化するチェックリストそのもののような雰囲気だが、自分たちの特権にはほぼ無自覚だ。
そのせいで最初は葛藤を感じた。なぜなら筆者の判断では、全体的に見て正しいのは夫妻だから。本作の核心であり、最も効果的に表現されているのは極めて深刻な訴えだ。英王室はメーガンを守らず、王室側の利益のためにタブロイドのいじめを積極的に悪化させることもあった、というものだ。
完璧でなくて当たり前
2人は自分たちの物語を語り直しては、カネを手にしている。だがそれは、災いをできる限り「福」に転じようとしてのことではないか。
考慮すべき点はもう1つある。人種などに対する差別に、いら立ちを招かない方法で対応するのは不可能に近い。