合同結婚式、韓国ではこんな「勧誘」がされていた......「宗教二世」日本人女性の壮絶体験
そんな姿を幼い頃から見ていた著者の中で、父親に対する憎しみは必然的に大きくなっていった。「父に泣かされている母を見させられ、同じ女性としていたたまれない気持ちになったものです」という心情には共感できるものがあるが、つまり統一教会は、そうした状況を利用していたわけである。
母を慰めてあげなければ、母を守ってあげなければと、いつも不安を抱えていたそんな幼少期でした。そのためか、私は自然と周りの空気を読む「良い子」になっていました。それが、統一教会に進ませる大きなきっかけになったことは間違いありません。(9ページより)
そのため高校2年の夏頃から、母親の言葉に従って渋谷の「ビデオセンター」に通い始める。そこは統一教会と最初に接点を持つ、真理を学ぶ施設。街なかや大学などで人生相談や手相見を通じて勧誘する先がここなのだそうだ。
出迎えてくれた人たちは笑顔で温かく、話を真剣に聞いてくれた。そして、親身になって話を聞いてもらった経験がなかった著者は、そのときを境に大きく心を開いていくことになる。
「結婚目的の男性たちが教義を信じたフリをして合同結婚式に」
高校卒業後は、いつも「お金がない」と嘆いていた母親に負担をかけたくないという理由から、行きたかった専門学校を諦めて就職を選択。仕事はうまくいっていたものの、母に勧められるまま「ホーム」と呼ばれる男女約30人が共同生活する施設に移り、仕事をしながら「献身」した。
献身とは表向きは神に24時間を捧げることとされていたが、実際には信者を隷属させる行為だった。
神のため、文鮮明のため、世界平和のため、自らの罪の清算のため、限界を超えて毎日全力投球しました。完全に洗脳されていた私は、自分が正しいことをしているのだという確信さえ抱いていました。でも、心の片隅のどこかでは強制されているという思いがなかったわけでもありません。(15ページより)
その理由を著者は、母親と違って「喜び」がなかったからだと記している。そのため誰かを伝道できるはずもなく、成績を出せないまま疲労困憊。仕事にも影響が出はじめ、友人も離れていき、泣く泣く退職することになる。
さて、実をいうとこれは本書の"入口"にすぎない。こののち著者は合同結婚式への参加を決意させられることになるわけだが、そこからの道のりがとてつもなく厳しいのだ。
ちなみにその際、以下のことを神に誓わされたのだという。
・相手がどこの国の人であっても決して断らないこと
・相手に障害があったとしても決して断らないこと
・相手に学歴がなかったとしても決して断らないこと
・どんな条件の人が与えられても決して断らないこと(18ページより)