「あなただけではない...」不安症、親の育て方が大きく関係──治療の最前線
THE ANXIETY EPIDEMIC
ケーリンが行った研究で、3世代にわたって不安症に悩まされている家族を調べたところ、不安が生じるプロセスには脳のほかの3つの領域も関係していることが分かった。「研究によると、不安と関係しているのは脳の1つの領域だけではない」と、ケーリンは言う。「前頭前野など、いくつもの領域が影響し合っている」
しかし、人が不安症を発症するリスクのうち遺伝的・生物学的要因が占める割合は半分に満たないと、ケーリンは強調する。「遺伝によって説明がつくのは、30~40%にすぎない。言い換えれば、環境的要因の重要性が極めて大きい」
親による保護の落とし穴
研究によると、不安を感じがちな子供がどのような大人に成長するかは、親の育て方に大きく左右される。矛盾に思えるかもしれないが、親がそうした子供を守ろうとすればするほど、その子供が強い不安にさいなまれる可能性が高まるのだ。
フォックスの研究によると、内気で行動抑制が見られる子供を幼稚園や保育園に通わせるだけでも、その子供が不安を抱きやすい傾向を脱却しやすくできる可能性があるという。2歳までもっぱら自宅で親に世話される子供は、12人中9人が成長しても内気で行動抑制が見られた。その一方で、幼稚園や保育園に通った子供は、13人中9人が自信を持って思い切った行動を取れるようになったのだ。
親が子供を守ってやりたいと思う気持ちは理解できると、コロンビア大学教授で、同大学「不安症および関連障害クリニック」の所長も務めるアン・マリー・アルバノは言う。けれども、「親がいつも子供を助け、問題を解決してやっていれば、その子の不安は解消せず、むしろ大きくなる......子供が自分の感情をマネジメントする方法を学べず、自分にとって好ましい結果を引き出すための問題解決のスキルも身に付かない」。
シルバーマンは、これを「保護の落とし穴」と呼ぶ。「子供の不安を和らげ、子供が恐怖を感じるような場から救い出したいと感じるのは、親としては自然な気持ちだが」と、シルバーマンは言う。「親がそのような行動を取ると、子供は不安の原因をひたすら避けるようになる」
不安の原因となる物事を避けたがるのは、強い不安を抱きがちな子供によく見られる傾向だ。「不安は、(不安の原因に対する)回避行動によって生まれる面が大きい」と、NIMHのパインは言う。「これは子供にも大人にも言えることだが、そうした回避行動を克服し、それらの要因と向き合うことができれば、不安はたいてい解消する」
ただし、「それを実践することが簡単だと言うつもりはない」と、パインは言う。「そこで、専門のセラピストの出番になる」