プーチン、教育・医療費削って国防・治安予算を増額へ 「愛国教育」は513%増
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ロイターの予算分析によると、ロシアは来年度予算の3分の1近くを国防と国内治安関連に費やす予定だ。ウクライナにおける軍事作戦の維持に資金を回すため、学校や病院、道路に割り当てられる予算は削減される。写真は5月にモスクワで行われた戦勝記念日の軍事パレードで撮影(2022年 ロイター/Evgenia Novozhenina)
ロシアは来年度予算の3分の1近くを国防と国内治安関連に費やす予定だ。ウクライナにおける軍事作戦の維持に資金を回すため、学校や病院、道路に割り当てられる予算は削減される。
ロイターの予算分析によると、ロシア政府は国防・治安関連に合計9兆4000億ルーブル(約21兆5000億円)を支出することになる。来年は2024年大統領選挙におけるプーチン氏の再選につながる重要な年だが、他の優先課題は圧迫される形だ。
ロシア連邦捜査委員会、検察庁、刑務所、ウクライナに派遣されている国家警備隊の活動を含む治安関連予算だけでも、2022年に比べて50%増加する。
ロシア政府としては記録的な規模の国防・治安関連予算になるが、金額自体は、米国の来年度国防予算および国土安全保障のニーズの一部(すべてではない)を満たすための予算に比べれば、約18%にすぎない。
独立系のアナリストであるアレクサンドラ・ススリナ氏は、「国家予算が軍事作戦の資金を捻出する手段になっている」と語る。「年金や教育関連の予算も増額されているとはいえ、ロシアが本来やるべきことに比べれば見劣りがする。10年来の問題が未解決のままだというのに」
ロシア財務省にコメントを要請したが、回答は得られなかった。
国内治安予算を5割増へ
予算編成の変化には、対ウクライナ軍事作戦のてこ入れというロシアの思惑が透けて見える。ウクライナでは、部分的に占領した4州の併合を宣言したにもかかわらず、9月以降は大幅な後退を強いられている。プーチン大統領はロシア連邦政府と国内80以上の連邦構成主体に対し、軍のニーズを支えるべく、これまで以上に効率的に協力するよう指示した。
表面的には、来年度の国防予算は4兆9800億ルーブルで、前年比わずか1%増となる。だがそれは単に、2月のウクライナ侵攻以降に、今年度の国防予算が当初の3兆5000億ルーブルから3分の1も増額されているからだ。
対照的に、国内治安関連予算は前年比50.1%増の4兆4200億ルーブルとなる見込みだ。
プーチン大統領は、対ロシア制裁は西側諸国にブーメランのように打撃を与えていると主張してきた。西側諸国ではエネルギーと食料のコストが急上昇し、ここ数十年で最悪のインフレへの対応に苦慮している。とはいえ、ロシアの経済も無傷ではない。
西側諸国による制裁と、30万人の予備役を招集する政府の決定を反映して、ロシアの第3・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比4%減少した。また、何十万人もの国民が徴兵を逃れるために国外に流出している。